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 「こちらは、ロボット専用運転となります」――。機械音声がこう告げると同時に、警備ロボットがエレベーターに乗り込んだ。東急不動産などが手掛けて2020年9月14日に開業した大型複合施設「東京ポートシティ竹芝」で始まった実証の1つだ(図1)。

図1 東京ポートシティ竹芝オフィスタワーの外観
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図1 東京ポートシティ竹芝オフィスタワーの外観
警備ロボットや掃除ロボット、商品陳列ロボット(棟内のローソン)などを配置する。(出所:東急不動産)

 東京ポートシティ竹芝オフィスタワーはエレベーターを使いこなすロボットを配置し、センサーが施設の混雑状況を感知して利用者に配信する「スマートビル」だ。ソフトバンクグループや子会社のソフトバンクの新社屋が入居することから、両社の“実験場”としても活用されそうだ。

 ビル内に警備ロボットや掃除ロボットを配置する取り組み自体は珍しくないが、普及に向けた課題も表面化している。それが、フロア間の移動だ。人間のようにエレベーターを呼び出すためにはボタンを押すためのアームを取り付ける必要があるが、自律的な操作には技術的な課題があり難しい。フロアごとにロボットを配置するとなると導入コストがかさむため、限定されたフロアにしかロボットを配置できない現状があった。こうした課題の解決策として、東京ポートシティ竹芝オフィスタワーで導入したのが三菱電機のIoT(Internet of Things)プラットフォーム「Ville-feuille(ヴィルフィーユ)」だ。

 ヴィルフィーユは、複数のロボットからのリクエストに応じてエレベーターの呼び出しや行き先階の登録を代行する(図2)。ロボットがエレベーターに乗り込むと「ロボット専用運転」に切り替わり、ロボットの行き先階以外には停止しない。三菱電機はヴィルフィーユ関連サービスの販売を20年10月1日に開始し、東京ポートシティ竹芝が「先行導入の第1号」(同社)になるという。

図2 警備ロボットがエレベーターを駆使
SEQSENSEの自律移動型警備ロボット「SQ-2」がエレベーターに乗り込む様子。(撮影:日経クロステック)

 実際にこのエレベーターを利用するのは、自律移動型警備ロボットの「SQ-2」だ(図3)。ロボット開発ベンチャーのSEQSENSE(シークセンス)が開発した。全高1300mmで質量65kgの卵形ロボットで、目を引くのが“頭部”のLIDAR(3次元レーザーレーダー)だ。全3基のLIDARが回転を続けることで周囲360度を監視しながら自律移動する。ビルの管理者は録画した360度の映像を見返せる。「国内では11台目の導入実績となった」(シークセンス)。

図3 警備ロボット「SQ-2」が棟内を自律移動する
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図3 警備ロボット「SQ-2」が棟内を自律移動する
全高1300mm、全幅510mm。LIDARに加えて超音波センサーや温度センサーを搭載する。連続稼働時間は6時間で、充電時間は1.5時間。(撮影:日経クロステック)

 ソフトバンクの技術担当者によれば、同社の自立移動型ロボット「Cuboidくん」もエレベーター移動に対応させていく予定という。Cuboidくんは370×370×670mmの箱形ロボットで、公式の可搬重量は20kgだが「30kgまでであれば問題なく運搬できる」(同社)。棟内では飲食物の運搬業務や、紫外線照射ユニット(波長253.7nm)を備え付けることで消毒業務を遂行する予定だ。LIDARなどを搭載しており、周囲の施設利用者が3m以内に近づくと停止する。