AR(Augmented Reality)用ヘッドマウントディスプレー(HMD)、いわゆるARグラスの研究開発に取り組んできた米Facebook(フェイスブック)がいよいよ製品化に踏み切る。イタリアの大手眼鏡メーカーLuxottica(ルクソティカ)と提携し、同社の著名ブランド「Ray-Ban(レイバン)」で2021年に発売する。2020年9月16日(米国時間)に開催した同社のAR/VR(Virtual Reality)開発者向けイベント「Facebook Connect」(旧Oculus Connect)で同社CEOのMark Zuckerberg氏が明らかにした。詳細な仕様は近日発表としている。
メガネ型端末であらゆる場所・モノをセンシング
この製品につながる研究開発を担っているのが、FacebookのAR/VR研究開発組織「Facebook Reality Labs」(FRL、旧名はOculus Research)である。イベントでは、FRLが取り組んでいる、ARグラスの実現に向けた研究プロジェクト「Project Aria」を発表した。
ARグラスを利用して、現実空間に情報や仮想オブジェクトを重畳する際には、周囲の環境を3次元(3D)かつリアルタイムで把握する必要がある。ただし、ARグラス側で周囲の空間をゼロからリアルタイムでスキャンして3Dマップを構築するのは、処理負荷が大きく難しい。
そこで、「Live Maps」と呼ぶ仮想3Dマップをあらかじめ作成し、それを利用することで、AR表示や分析、環境認識などの処理の効率化を図る。地図アプリを持たないFacebookにとって、仮想3Dマップを作る取り組みは必要不可欠である。「Google Map」や「Apple Map」などの地図アプリで、膨大な3Dデータを収集した他社とは違うところだ。
仮想3Dマップの構築を促すためにProject Ariaでは、専用のメガネ型端末に搭載した複数のセンサーにより、地形や建物などの3Dデータや視覚情報(アイトラッキングデータ)、3Dオーディオに対応した聴覚情報などを収集する。すでにFRLのメンバーが装着し、自社のオフィスや敷地でデータ収集を始めているという。
個々人が装着したメガネ型端末をデータ収集に使うことで、分解能が向上し、屋内のデータも集めやすくなるという。この点が、衛星写真や、3Dセンサーを備えた自動車で計測したデータ、3Dセンサー付きバックパックを背負った作業員が徒歩で計測したデータなどと比べた場合の優位性とする。