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 菅義偉新内閣が発足し、デジタル化推進を実施する方針に対して、若い世代や経済界からは大きな期待がかかっている

* 2020年9月17日付日本経済新聞電子版「デジタル化、全閣僚で推進 菅内閣が発足」、https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63944950X10C20A9EA2000/

 残念ながら、日本のデジタル化は決して進んでいるとはいえない。新型コロナウイルスでも、厚生労働省と地方自治体、医療機関の間でデジタル化が進んでおらず、情報共有が迅速に行われていないことが原因で混乱が生じた。その結果、感染者数という一元的な数値だけが独り歩きしてしまった。さらに言えば、マイナンバーを活用できなかったという反省点もある。

 こうした流れから、改革の旗印にデジタル化推進を掲げるのは自然だし、デジタル庁を創設する方針を打ち出したところを見ても、新内閣の並々ならぬ意欲を感じる。特に、進まないデジタル化に不満を募らせていた若い世代にとっては待望の方針でもある。むしろ遅すぎるという声も多い。

菅内閣が発足
菅内閣が発足
デジタル化を推進すると宣言した。(首相官邸Webサイトからのキャプチャー)
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 一方で、期待が大きい分、失敗は許されない。関係者には大きなプレッシャーがかかるだろう。しかも、普通にやってうまくいくほど簡単な話ではない。いばらの道であることは間違いないだろう。

縦割りをまとめることは非常に難しい

 物事には順序がある。そのことは理解しているし、筆者には想像もつかないさまざまな事情があることも承知の上で理想を言えば、デジタル庁ではなく、早い段階で「デジタル省」にすべきである。

 縦割り行政を代表するものとして、総務省が主幹する通信および電波関連の行政、経済産業省が主幹する情報処理関連や中小企業のデジタル化推進の行政がある。実は、他にもIT関連の行政において縦割りの部分がある。官公庁のセキュリティー事故対応に関しては内閣官房内の内閣サイバーセキュリティセンターが担当で、IT教育や学校のオンライン化や大学・研究機関との連携は文部科学省の所管である。また、今後懸念される海外からの大規模なサイバー攻撃に関しては自衛隊と防衛省の担当になるだろう。さらに、データ連係という意味では、全ての官庁および地方自治体が対象となる。

 常識で考えれば、これをうまくまとめ上げるのは至難の業だ。少なくとも、「各省に対して協力を依頼するなどの補助的な役割として参加する」というスタンスでは到底難しいだろう。役割分担が明確にならないと動くことはできない。それを決めて全体に納得させるのは、非常に大きなリーダーシップが必要になるからだ。その難易度を下げるには、できる限り組織間の調整が不要となるように、デジタル関連の行政を集める必要があると思う。