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 小田急電鉄は2020年10月にも、地域限定SNS(交流サイト)「いちのいち」の提供を本格化する。企業風土改革を目指して2018年から運営している事業アイデア公募制度「climbers(クライマーズ)」の第1弾案件となる。

小田急電鉄が開発したSNS「いちのいち」を取り上げた神奈川県秦野市の広報誌
小田急電鉄が開発したSNS「いちのいち」を取り上げた神奈川県秦野市の広報誌
(出所:秦野市)
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 既に2019年10月から、小田急沿線の神奈川県秦野市にある山谷自治会をユーザーとする実証実験をしている。いちのいちは自治会の回覧板をデジタル化したイメージだ。

 紙の回覧板では情報が自治会を一巡するまで数日かかるが、いちのいちならすぐに共有できる。自治会内の訃報や、イベント開催・中止などの情報もすぐに伝わる。子供会のイベントリポートや、野菜移動販売の来店予定といった地域密着型の情報も共有する。

匿名性排除し高齢者が安心して使えるように

 こうした機能だけなら、LINEやFacebookといった既存のSNSでも代替できるように思える。しかし、いちのいち事業の責任者で、小田急電鉄の経営戦略部に所属する東海林勇人氏は「LINEやFacebookなどは地域を越えて広く情報共有するのが前提のツールで、匿名性を排除できない。訃報のような自治会レベルの地域情報を安心して共有しにくい。自治会に多い高齢者にとっての視認性や操作性にも課題がある」と説明する。

小田急電鉄経営戦略部の東海林勇人氏
小田急電鉄経営戦略部の東海林勇人氏
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 こうした課題を解決するため、いちのいちのユーザーIDは自治会単位で実名で発行するルールだ。自治会が本人確認を担うので、無関係の第三者が入り込むことはない。自治会員でなくても、遠方に住む自治会員の家族はユーザーIDを取得できる。

 高齢者にとって使いやすくするため、東海林氏は山谷自治会と一緒にアジャイル方式で画面を作ってきた。自治会の意見を聞きながら、文字や写真、ボタンなどの大きさや配置を変えた。

 現在は秦野市以外の自治体・自治会にも広がりつつある。例えば川崎市の自治会とも実証実験を始めており、ユーザー数は合計140人程度だ。ユーザーは無料で利用できる。しばらく実証実験の形で展開を続け、今後、小田急グループ企業やその他の地元企業の広告を掲出するなどの収益化を検討する。