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 2030年代の実用化を目指す無線技術「6G」の議論が活発化している。6Gでは5G(第5世代移動通信システム)で扱う周波数帯よりもさらに高い、テラヘルツ(THz)帯の活用が視野に入る。テラヘルツ帯の活用は、ネットワークトポロジーからデバイスの素材までを一変するゲームチェンジになる可能性がある。ノウハウをいち早くつかむことが、6G時代の主導権を握る上で欠かせない。

 6Gは、5Gをさらに高速化した100Gビット/秒の通信や、空や海、宇宙といったあらゆる場所への超カバレッジ拡張などが要求条件として議論されている。100Gビット/秒の超高速・大容量を実現する上で鍵を握るのがテラヘルツ帯の活用だ。高い周波数帯ほど空きが多く、広い帯域幅を使える。

 5Gでは現在、ミリ波帯の52.6GHzの使用まで標準化されている。将来的には90GHz帯の利用まで拡張される見込みだ。6Gではさらに高い、テラヘルツ帯の100G〜300GHz帯にスポットが当たっている。テラヘルツ帯は産業用途ではほぼ手つかずであり、膨大な電波資源が眠っている。

テラヘルツ帯は壁の凹凸で散乱も

 ただテラヘルツ帯の電波の扱いは、5Gのミリ波帯と比べても一層難しい。光に近い特性を持つため、見通し環境以外の場所に電波が届きにくい。樹木や人体、降雨、大気の影響で電波が簡単に遮られてしまう。さらにテラヘルツ帯の波長は1mmレベルになるため、「これまで平らに見えていた壁の凹凸も見えるようになる」(NTTドコモ ネットワークイノベーション研究所の須山聡氏)という。壁の材質による電波の散乱といった、これまでの無線通信では想定していない挙動が起きることになる。

6Gは分散ネットワークトポロジーが向く
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6Gは分散ネットワークトポロジーが向く
(出所:NTTドコモの6Gオンラインイベントの内容をキャプチャー)

 NTTドコモ ネットワークイノベーション研究所の岸山祥久氏は、こうした課題をクリアし、テラヘルツ帯のメリットを生かすために「6Gは分散ネットワークトポロジーが向く」と指摘する。

 分散ネットワークトポロジーとは、端末の周囲にできるだけ多数のアンテナを設置し、近距離の見通し環境の通信経路を多数作るような構成のことだ。「いずれかの通信経路が途切れたとしても、他の経路でカバーできる。信頼性を高められる。テラヘルツ帯のような高い周波数帯はもちろん、ワイヤレス給電との相性もよい」(岸山氏)とする。

 過去の無線通信は、セル間が干渉しないような六角形のセル構成が理想的といわれてきた。4G(第4世代移動通信システム)以降は、スモールセルとマクロセルを重畳する「ヘテロジニアスネットワーク」と呼ばれるトポロジー構成が一般的となった。6Gで分散ネットワークトポロジーが主流になると、これまでのネットワークの作り方から一変することになる。

 もっとも分散ネットワークトポロジーには課題もある。多数のアンテナを設置することによる電波干渉をどのように抑えるのかという点、そして多くのアンテナを目立たないようにどうやって設置するのかという点だ。後者について岸山氏は「人が生活している場所は明かりに照らされている。そのため、街灯や照明などにアンテナの機能を持たせることが理想的ではないか」と指摘する。