「情報は入ってきているが、カリフォルニア州政府から詳細な発表がされていない。現時点ではコメントできない」(ホンダ)。「発表については認識しており、状況を注視している」(スバル)。
2020年9月23日(現地時間)に米カリフォルニア州の知事が自動車に関する規制強化を発表した。2035年までに同州で販売する全ての新車をZEV(Zero Emission Vehicle:無公害車)にすることを義務付ける。ZEV規制では2018年にハイブリッド車(HEV)が対象から外れ、電気自動車(EV)および燃料電池車(FCV)と、過渡的なZEV〔Transient ZEV:TZEV、すなわちプラグインHEV(PHEV)と水素エンジン車〕だけがZEVの対象となっている。すなわち、新車の100%をZEVにすることは、エンジン車やHEVの販売を全面禁止することになる。
注視しつつ、けん制も
これに対し、トヨタ自動車と日産自動車は共に個社としてのコメントを避け、代わりに米国自動車イノベーション協会(Alliance for Automotive Innovation)の加盟企業としてコメントを発表した。趣旨は以下の通りだ。
自動車業界は現在、40モデル以上のEVを米国市場に提供している。2025年までにはモデル数が3倍になる見込みだ。販売の義務化や禁止命令などは正しい市場形成につながらないと考える。市場は連邦政府や自治体、自動車メーカー、販売店などさまざまなステークホルダー(利害関係者)の努力によってつくられる。カリフォルニア州の電動車の普及率は全米の中では最大だが、10%未満しかない。これをさらに高めるには、インセンティブや建築基準などの面でさらに努力が必要だ。同州とも協力して電動化比率を高めるように努力する──。
要は、同州の新規制強化は極端なEV推しとなっているが、顧客がついてきていない。「規制ありきではなく、行政と自動車メーカーで連携すべきだ」(トヨタ自動車)という主張である。同州を刺激するのを避けつつも、一方的な規制強化に反対する姿勢を見せている。
カリフォルニア州の新規制強化をどのように見るべきか。元トヨタ自動車の技術者で愛知工業大学工学部客員教授の藤村俊夫氏に聞いた。
「顧客の視点が欠けている」
二酸化炭素(CO2)排出量に対する規制強化の方向性自体は正しい。だが、なぜエンジン車を全面的に禁止してEVへと短絡的に動くのか。カリフォルニア州の新規制は、顧客の視点が欠けている。