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 「完全子会社化によって、NTTドコモの競争力強化・成長を図る。ドコモはNTTコミュニケーションズ(NTTコム)、NTTコムウェアの能力を活用して、総合ICT企業として成長してほしい」――。NTT持ち株会社社長の澤田純氏は2020年9月29日、オンラインで実施した会見でNTTドコモを完全子会社化する狙いについてこう力説した。

 2020年9月30日からTOB(株式公開買い付け)を実施し、他の株主から3割強の株式を取得する。買収総額は約4兆2500億円となる。NTTドコモは政府措置方針を経て1992年にNTTから分離独立、1998年に上場した。TOBが実現すればNTTドコモは、NTT持ち株会社の100%子会社となり上場廃止となる見通しだ。

NTTによるドコモの完全子会社化について正式発表する、NTT持ち株会社社長の澤田純氏(左)とNTTドコモ社長の吉沢和弘氏(右)
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NTTによるドコモの完全子会社化について正式発表する、NTT持ち株会社社長の澤田純氏(左)とNTTドコモ社長の吉沢和弘氏(右)
(出所:オンライン会見をキャプチャー)

「ドコモは3番手、競争力強化のために完全子会社化が必要」

 会見で澤田氏がドコモの完全子会社化の狙いとして繰り返し指摘したのが「ドコモは契約数シェアでは国内首位だが、営業利益では3番手。ハンドセットの獲得で競合他社にビハインドしている」という点だ。NTTドコモは、NTTグループ全体の売上高の約3割強、営業利益に至っては6割近くを占める稼ぎ頭だ。だが2019年度の連結決算では、2019年6月に実施した携帯料金の引き下げの影響で利益が落ち込み、KDDIやソフトバンクに後塵(こうじん)を拝する業界3位となった。

 加えて「NTTグループの中でも最も保守的で改革のスピードが遅いのはドコモ」とNTTグループ幹部が公然と語るなど、変革のスピードに欠けた同社の企業体質が課題として指摘されることも多かった。それは上場子会社として、少数株主への意見も配慮しなければならないというドコモの事情もあった。

 情勢が変わったのは新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化していた2020年4月後半だ。NTT持ち株会社社長の澤田氏が、ドコモの競争力強化のために完全子会社化したい意向をNTTドコモ社長の吉沢和弘社長に伝えた。

 吉沢氏は当時、「5G(第5世代移動通信システム)の商用サービスが始まり、モバイルだけでなく5Gを使ったソリューションの領域を広げていかないと競争に打ち勝てない状況」という状況認識だったという。吉沢氏は競争に打ち勝つ近道は「NTTグループが持つ強力なアセットを活用すること」と捉え、2020年6月に完全子会社化を受け入れる決断をした。

 澤田氏は会見で今後ドコモに、法人ビジネスやソフトウエア開発に強いNTTコムやNTTコムウェアを移管することも検討するとした。両社の吸収合併の可能性も検討する。NTTコムやNTTコムウェアと連携することで新生NTTドコモは、コンシューマーだけでなく法人顧客も含めた「すべての顧客フロント」(吉沢氏)になるとした。

 澤田氏は「NTTコムやNTTコムウェアをドコモに吸収合併するのかどうかは、これからの議論次第」としたが、吸収合併するとなると新生ドコモは売上高6兆円規模のNTTグループの中核企業に生まれ変わることになる。NTTドコモの完全子会社化は、2018年に実施したNTTグループの海外事業再編に次ぐ、さらなる再編の布石になる。