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 全社一丸となってDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいる企業は成果が高い――。IPA(情報処理推進機構)が2020年8月31日に刊行した『IT人材白書2020』でそうした状況が判明した。「全社戦略に基づいて全社的にDXに取り組んでいる」と回答した企業は、一部部署や、部署ごとに独自で取り組んでいる企業より生産性の向上や新製品・サービスの創出、既存製品・サービスの高付加価値化などにおいて「成果あり」とした割合で上回った。

 調査は2020年1月24日~3月2日に実施し、計2044社が回答した。IPAはこのうち、デジタルビジネスの推進部署を設置するなど、DXに取り組んでいると回答した企業185社を「デジタルビジネス推進企業」と定義している。

4割強の企業がDXに取り組む

 調査対象企業全体のうち、どのくらいの割合がDXに取り組んでいるのか。有効回答1984社のうち4割強(41.2%)が「全社戦略に基づき全社的に」「全社戦略に基づき一部の部門で」「部署ごとに独自、個別に」のいずれかでDXに取り組んでいると答えた。従業員規模で見ると、1001人以上の企業では77.6%と既に8割近くが取り組んでいる。一方、従業員が少ない企業だと、DXに取り組んでいる割合が下がる。従業員数が101~300人以下だと35.8%、100人以下だと29.1%という水準だった。

DXへの取り組み状況(従業員規模別)。全体では41.2%がDXに取り組んでいる。DXに取り組んでいるとは、「全社戦略に基づいて全社的にDXに取り組んでいる」「全社戦略に基づき、一部の部門においてDXに取り組んでいる」「部署ごとに独自、個別に取り組んでいる」と回答した企業を指す
DXへの取り組み状況(従業員規模別)。全体では41.2%がDXに取り組んでいる。DXに取り組んでいるとは、「全社戦略に基づいて全社的にDXに取り組んでいる」「全社戦略に基づき、一部の部門においてDXに取り組んでいる」「部署ごとに独自、個別に取り組んでいる」と回答した企業を指す
(出所:IT人材白書2020 IPA)
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全社でDXに取り組む企業7割が「生産性の向上」に成果ありと回答

 では、調査対象企業のうちDXに積極的だと考えられるデジタルビジネス推進企業では、進めている取り組みに対し、どの程度成果を実感しているのだろうか。

 DXへの取り組み内容と成果を聞いたところ、「全社戦略に基づいて全社的にDXに取り組んでいる」企業が成果を上げていることが分かる。例えば「業務の効率化による生産性の向上」について「成果あり」と答えた割合は、DXへの取り組みが「全社戦略に基づき全社的」という企業で71.6%、「全社戦略に基づき一部部門」の企業で40.0%、「部署ごとに独自、個別」という企業で27.0%と差があった。

デジタルビジネス推進企業の取り組み状況とDXやデジタルビジネスの取り組み内容・成果を比べた。「全社戦略に基づき、全社的にDXに取り組んでいる」企業が、それ以外の企業に比べ、取り組み内容に「成果あり」と答えた割合が高い(下部の3つのグラフ。ただし回答数が少なくなることに注意)
デジタルビジネス推進企業の取り組み状況とDXやデジタルビジネスの取り組み内容・成果を比べた。「全社戦略に基づき、全社的にDXに取り組んでいる」企業が、それ以外の企業に比べ、取り組み内容に「成果あり」と答えた割合が高い(下部の3つのグラフ。ただし回答数が少なくなることに注意)
(出所:IT人材白書2020 IPA)
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 調査を担当したIPAの下川裕太郎・社会基盤センター人材プラットフォーム部スキルトランスフォーメーショングループ研究員は、DX推進を成功に導くには「企業トップの危機意識、経営層の理解があるかどうか」が最初のポイントだと話す。その意識を共有したうえで、DXの重要性に対して強い思いを持つリーダーが周りを巻き込んでいくことがポイントだと指摘する。

不足感が高いUI/UXデザイナーとデータサイエンティスト

 IPAはデジタルビジネス推進企業に対し、DX対応人材の動向を調べた。これらの人材の重要度について、「非常に重要」な人は「プロダクトマネジャー」だとする企業が80.5%で、一番割合が高い。次が「ビジネスデザイナー」で76.8%、3番目が「テックリード(エンジニアリングマネジャー、アーキテクト)」の72.5%だった。

 一方、「(社内に)いないが非常に重要」という人に着目する。つまりデジタルビジネス推進企業が重要視しているが自社に在籍していない、不足感の高い仕事といえる。不足感が最も高かったのは「UI/UXデザイナー」で44.3%、次いで「データサイエンティスト」で33.5%だった。

デジタルビジネス推進企業におけるDX対応人材の重要度。社内にいて、非常に重要だとみられているのが「プロダクトマネージャー」だ
デジタルビジネス推進企業におけるDX対応人材の重要度。社内にいて、非常に重要だとみられているのが「プロダクトマネージャー」だ
(出所:「デジタル・トランスフォーメーション推進に向けた企業とIT人材の実態調査」より、IT人材白書2020 IPA)
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