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 2021年度予算編成に向けた府省庁の一般会計概算要求が出そろった。新型コロナウイルス感染症への対応で例年より要求期限が1カ月遅れとなった。要求総額は約105兆円超の過去最高。そのうちデジタル関連の主な項目を集計したところ9870億円にのぼった。

2021年度概算要求における主なIT関連政策
(出所:各府省の公表資料を基に日経クロステック作成。100万円単位で四捨五入した。要望額は新型コロナウイルス対応など緊要経費として要望する)
担当省庁項目要求額2020年度予算からの増減
内閣官房情報システム関係予算(一括計上経費)829億円(要望額含む)23%増
総務省マイナンバーカードの普及、利活用促進1451億円64%減
6Gなど先端技術への開発投資732.5億円26%増
5Gや光ファイバーなど通信基盤整備256.8億円11%増
国・地方での行政デジタル化の推進139.5億円18%増
災害時の情報伝達手段の確保95.2億円78%増
情報セキュリティー分野の人材育成や環境構築83.6億円41%増
厚生労働省データヘルスの集中改革プランなどの実施1039億円+要望額1%増以上
ナッジやデータヘルスを活用した健康推進29億円+要望額93%増以上
データヘルスの効果的な実施の推進9.9億円+要望額12%増以上
雇用型テレワークの導入・定着推進31億円10倍
「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理システム(HER-SYS)」による情報収集・活用の効率化要望額新規
文部科学省GIGAスクールサポーター配置促進53億円新規
学習者用デジタル教科書普及促進事業52億円260倍
オンライン学習システムの全国展開、データ利活用推進36億円18倍
「富岳」などの整備、研究施設のリモート化の推進970.2億円95%増
先端研究の強化、研究データプラットフォーム構築776億円27%増
経済産業省共通認証システム「GビズID」などを活⽤した行政手続きのデジタル基盤・ルールの整備77億円79%増
デジタルを活⽤した産業の転換1088億円24%増
スタートアップの支援やAIやセンシングへの研究開発推進などイノベーション・エコシステムの創出1127億円22%増
内閣府マイナンバー制度の推進5億円2倍
防衛省自衛隊サイバー防衛隊(仮)の新設などサイバー能力向上357億円50%増
財務省税務手続きのデジタル化・オンライン化など162億円新規
法務省行政手続きのオンライン化および行政機関間の情報連携の推進118.7億円1.6倍
農林水産省スマート農業総合推進対策事業55億円3.6倍
農林水産省共通申請サービス(eMAFF)によるDXの推進93億円13倍
国土交通省インフラ・物流分野などのデジタルトランスフォーメーションの推進183億円3.3倍
外務省旅券の電子申請システムの設計・開発など21.1億円9.1倍

 2021年度予算の概算要求の特徴は、新型コロナウイルス感染症への対応など「緊要な経費」について別途要望できると財務省が示した点だ。表中の「要望額」がそれに当たる。この措置により総額はさらに膨らむ見通し。約1兆円に迫るデジタル関連の概算要求には、菅義偉首相肝いりのデジタル庁創設の布石となる「IT調達の一元化」や、マイナンバーカードの普及に関連した政策も目立った。

IT調達一元化は2020年度比23%増

 政府のIT投資を効率化するため、内閣官房が2020年度から始めたIT調達の一元化では「情報システム関係予算(一括計上経費)」として、新型コロナ対応の要望額を含めて2020年度当初予算比23%増の829億円を求めた。

 内閣官房の一括計上経費にはマイナンバー制度の個人向けサイトである「マイナポータル」の整備などに向けた84億3300万円も盛り込んだ。また、人事・給与情報システムといった府省共通の「41システム分のIT調達費用を積み上げた」(内閣官房)という。

 菅義偉首相肝煎りのマイナンバー制度では、総務省が要求した「マイナンバーカードの普及、利用促進」の1451億円が特に大きい。2020年度より6割以上減ったが、これはポイント還元の原資などとして2020年度に2458億円を確保したマイナポイント事業が終了する反動減が主な要因だ。

 要求額1451億円はカード媒体の購入や市区町村での発行事務経費などに充てる。政府は2023年3月末に累計発行枚数を9000万~1億枚まで引き上げる計画に沿って、2021年度は3000万~4000万枚の新規発行を目指している。2020年度予算で計画する新規発行枚数は3000万~4000万枚なので、総務省は2年連続で同じ規模を発行する考えだ。

 通信インフラ分野では、先端分野の研究開発投資を26%増の732億5000万円増額した点が目立つ。最新の5G(第5世代移動通信システム)に続く次世代移動通信システム「6G」を狙った要素技術の研究支援に、新規で最大70億9000万円を盛り込んだ。電波資源を拡大する研究開発に222億2000万円を求めたほか、商用化が始まった量子暗号通信で国際通信網の構築を想定した研究開発に34億5000万円を要求した。

 総務省は災害時の情報通信手段の整備を強化するため、2020年度当初予算に比べて78%増となる95億2000万円を求めた。既存の地方自治体向け防災情報システム整備や4Gを活用した防災情報の開発・検証などに充てる。

 国・地方での行政デジタル化の推進には同18%増の139億5000万円を盛り込んだが、大半は総務省が管轄する無線局手続きのデジタル化に費やす。地方自治体を含めた本格的な行政手続きデジタル化の予算確保はデジタル庁発足後になりそうだ。