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職人に出勤させず、リモートでの作業に切り替えて生産活動を続ける町工場がある。東京・江戸川の溶接工場、クリエイティブ ワークスだ。代表の宮本卓氏は「溶接職人にリモートワークへ切り替えてもらった。現場作業のほとんどを自宅でやってもらっている」と話す。

 新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)拡大を受けたリモートワークへの取り組みに追従しきれない企業がある*1。特に町工場は、現場作業なしでは成り立たない以上、縮小稼働か休業しかない─と考えるのが普通だ。そんな見方を覆し、2020年4月からリモートワークへと転換した町工場がある。東京・江戸川に所在するクリエイティブ ワークスがそれ。新たな事業展開を目指し、新型コロナ以前から取り組んできた2つの試みが結果的に生きた。

*1 調査会社のNEXER(ネクサー)(東京・豊島)が2020年4月14日に結果を公表したWeb調査(調査対象901人)によれば、事前に「職場に出社して勤務している」と回答していた人の約8割が、「在宅勤務に切り替えていない」と答えた。政府が東京都を含む7都道府県に対し非常事態宣言を発令した同年4月7日の直後、4月8~10日に実施した。

ごく普通に見える町工場

 2つの取り組みとは、IoT(Internet of Things)ベースの「溶接キット」と、クラウドを利用したITシステムの導入である。

 クリエイティブ ワークスの前身は1962年創業の宮本工業所。代表の宮本卓氏の生家である。同氏は東京工業大学大学院を卒業後、大手鉄鋼メーカーに約7年間勤めた後に、父の宮本修治氏が経営する宮本工業所に転職、現場で金属加工の技術を習得した。宮本工業所は2016年に解散、卓氏が新たに立ち上げたのがクリエイティブ ワークスだ(図1、2)。

図1 クリエイティブ ワークス 代表の宮本卓氏
図1 クリエイティブ ワークス 代表の宮本卓氏
(写真:小林由美、Web会議取材)
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図2 クリエイティブ ワークスの建屋
図2 クリエイティブ ワークスの建屋
(出所:クリエイティブ ワークス)
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 現在、同社では宮本父子と溶接職人の市原萌氏の3人が働く。その現場は、テレビドラマに出てくるような、いかにも「ザ・町工場」といったアナログな雰囲気だ(図3)。

図3 クリエイティブ ワークスの作業場
図3 クリエイティブ ワークスの作業場
テレビドラマでよく見るような町工場らしい様子。(出所:クリエイティブ ワークス)
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 同社は「東京町工場 ものづくりのワ」という東京都内の金属加工会社3社による協働コミュニティーにも参画する。宮本氏は一般のサラリーマンがクラブ活動的に宇宙開発事業に取り組む「リーマンサット・プロジェクト」の代表理事も務めている。自社にとどまらず、積極的に対外活動にいそしむ中で、ITや通信などのさまざまな技術に触れてきた。

 在宅リモートワーク実現も、同氏の好奇心と経験と知恵からの成果が、思わぬタイミングでうまくはまった形になった。その原動力となった活動の1つが、職人の育成だ。