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 トヨタ自動車が傘下の日野自動車などと絆を強めて商用車の電動化を推進している。舞台は米国だ。2020年10月5日(米国時間)、大型の燃料電池(FC)トラックを両社で共同開発する方針を示した他、日野は電動技術に強みを持つパートナー企業と連携して、電気自動車(EV)トラックの開発を加速すると発表した。乗用EVでは米Tesla(テスラ)などに出遅れたトヨタであるが、電動化の方式を複数持つグループの強みを生かして、商用車分野の市場開拓を急ぐ。

 「プロジェクトZ」――。米国日野は同日、新たな開発ロードマップの名称も明らかにした。米国で需要があるクラス4(小型)からクラス8(大型)注)のラインアップに、化石燃料を使わない「ゼロエミッション車」を加える。量産モデルの詳細は未発表だが、先陣を切る車両は21年前半に試作モデルを製作。22年の顧客との実証を経て、24年までに量産を始める。

注)クラス別の小型・中型・大型の分類は日野自動車の定義に準ずる。

次期ミライのFCシステム活用か

 長距離の幹線輸送に使う大型FCトラックでは、トヨタのFCシステムを日野の量産車に組み込む(図1、2)。ベースは日野が北米に投入しているクラス8の「XLシリーズ」だ。同車両はトラクター(けん引車)タイプで、トレーラー(被けん引車)と連結して荷物を運ぶ。

図1 トヨタ自動車と日野自動車が共同開発する大型燃料電池(FC)トラックのイメージ
図1 トヨタ自動車と日野自動車が共同開発する大型燃料電池(FC)トラックのイメージ
(出所:トヨタ自動車、日野自動車)
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図2 2021年前半に大型FCトラックの試作車両を製作予定
図2 2021年前半に大型FCトラックの試作車両を製作予定
開発日程について言及したトヨタ自動車の北米事業体Toyota Motor North America(TMNA) R&Dでシニア・エグゼクティブ・エンジニアの横尾将士氏(右)。(出所:日野自動車)
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 トヨタは同じくトラクタータイプの大型FCトラックを使い、17年夏から米国カリフォルニア州で実証実験を進めてきた。車両は米Kenworth(ケンワース)といった日野以外のトラックメーカーと組んで開発し、トヨタが14年に発売した乗用FCV「MIRAI(ミライ)」のFCシステムを転用して実現している。

 また、日本向けにトヨタと日野が共同開発している「プロフィア」ベースの大型FCトラックもある。同車両では、20年末に発売を控える次期ミライのシステムを使って、1充填で航続距離600kmを狙う。

 このため、米国で量産を目指すトラクタータイプの大型FCトラックも、同じく次期ミライのシステムを活用する可能性が高い。幹線輸送に特化したトラクタータイプの車両のため、プロフィアベースを上回る航続距離600km超を目指すとみられる。

 攻勢をかけるトヨタと日野であるが、大型FCトラックの開発競争は激しく、商用車首位の独Daimler(ダイムラー)もトラック・バス事業会社を通して参戦している。同社は1充填で1000km以上を航続可能なトラクタータイプの車両を開発中で、23年より一部顧客向けのトライアル提供を開始し、25年以降に量産する計画だ。トヨタと日野が競争を優位に進めるためには、他社に先立って量産にこぎ着け、市場を早い段階で占有しておく必要がある。