AI(人工知能)ベンチャーの米StradVision(ストラドビジョン)が自動車のADAS(先進運転支援技術)市場で注目を集めている。同社のAIソフトを搭載したルネサスエレクトロニクスの車載SoC(System on Chip)が欧州1次部品メーカー(ティア1)のADAS用カメラに採用され、2020年内にも量産が始まる見通しだ。ADASカメラ市場で圧倒的な強さを誇るイスラエルMobileye(モービルアイ)の牙城に挑む。
ストラドビジョンは、物体の認識精度を落とさずにAIのニューラルネットワークを簡素化する技術に強みを持つ。同社が開発したニューラルネットワーク「SVNet」は、同じ認識精度を持つ他のニューラルネットワークに比べて、半導体チップに求められる性能を10分の1以下に抑えられるという。このため、小型・低電力化が求められる車載カメラなどに組み込みやすい。
ニューラルネットワークを簡素化する技術には、さまざまな手法が知られており、同社もそうした技術を使っている。ただ、「認識精度を低下させずに、ニューラルネットワークを簡素化することは一般的には相反することで、非常に難しい」(ストラドビジョンの日本法人で代表取締役社長を務める塙洋明氏)という。さまざまな工夫を施すことで認識精度をあまり落とさずにニューラルネットワークを簡素化できるという。同社はこうした実務的な特許の取得に力を入れている。
ADAS用カメラに使った場合、車両や歩行者などの認識精度は、「モービルアイと遜色ない」(同氏)という。AIの処理に必要な性能を低く抑えられることから、最適な車載SoCを選べばモービルアイよりもコストを下げられる可能性がある。