新型コロナウイルスの感染拡大防止策として厚生労働省が導入した接触確認アプリ「COCOA(ココア)」を巡る混乱が、リリースから4カ月近くたった今も続いている。重大なバグが相次いだうえに、COCOAから「接触あり」の通知があったPCR検査希望者が急増し、検査体制を圧迫したり保健所の業務負荷が増したりしている。

通知後のフローを全面的に改めるべき
「COCOAの第一義的な役割を即時の自主隔離と規定したうえで、通知後のフローを全面的に合理化すること」――。
これは、2020年9月17日に開かれた内閣官房の新型コロナウイルス感染症対策テックチーム内の「接触確認アプリに関する有識者検討会合」において提出された提案書の1文だ。提出したのは同会合の有識者委員で、世界経済フォーラム第四次産業革命日本センターに所属する慶応義塾大学の藤田卓仙医学部特任講師と、田辺総合法律事務所の吉峯耕平弁護士である。事態の収拾に向けた本気のダメ出しと言える。
提案書では、通知後のフローを「即時の自主隔離を促すことを基本とし、発症の有無とPCR検査を基本にした現行フローを全面的に改める」と提言。そのうえで、接触日と感染リスクをアプリ上で分かりやすく表示するなど、自主隔離の有効性向上と保健所などの現場負担の軽減を求めた。
「現状では感染防止に十分役立っていない」(慶応大の藤田特任講師)との問題意識からの提案だった。だが、提案に対する厚労省からの反応はこれまで特にないという。
PCR検査希望者が急増
厚労省は2020年6月19日にCOCOAをリリースした。総ダウンロード数は約1821万件(2020年10月9日午後5時時点)、アプリ利用者の陽性登録件数は1078件(同)まで広まった。
COCOAはスマートフォンのBluetoothを利用し、ユーザー同士の接触を検知し、記録するアプリである。新型コロナ感染症の陽性者と接触した可能性が生じた場合、COCOAがユーザーにプッシュ通知する。だが、通知後のフローを巡っては試行錯誤が続いている。