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米Sony Interactive Entertainment(SIE、ソニー・インタラクティブエンタテインメント)が2020年11月に発売する据え置き型ゲーム機「PlayStation 5(PS5)」には、コスト削減や静音性の向上、ならびに筐体(きょうたい)サイズをなるべく小さくするために、熱設計にさまざまな工夫を施している。PS5では、メインプロセッサー(SoC)で生じた熱を液体金属の熱伝導材料(TIM)で効率よく大型のヒートシンクに伝導し、大きな冷却ファンで風を送ってそのヒートシンクを冷やす。前編では液体金属のTIMについて解説した。後編となる今回は、大型の冷却ファンやヒートシンクについての工夫を紹介する。
PS5の冷却ファンは、PS3やPS4と同じく、遠心式だ。直径は120mm。制御はPS4と同じサーボ式で、発熱状況によって回転数を調節する。遠心式ファンは全周方向に風が出る。デスクトップパソコンで一般的な軸流ファンに比べて、風量は少し小さいものの、静圧が少し高いという特性を備える。
利用するファンの種類は一般に、求められる静圧と流量から選ぶ。仮にファンに求める静圧が低ければ、遠心式ファンではなく、軸流ファンが選択肢に上がる。PS5で必要なファンの静圧は「軸流ファンを選ぶか、遠心式ファンを選ぶか、迷うくらいの値になった。だが、まだ遠心式ファンがストライクゾーン」(PS5の機構設計・熱設計の責任者である鳳 康宏氏)だという。