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 容量市場の初回約定結果が9月14日に公表されて以来、新電力関係者は騒然としている。小売電気事業者の会員組織「日経エネルギーNextビジネス会議」は9月30日に定例会合を開催。容量市場について議論するとともに、アンケートを実施した。そこから浮かび上がってきたのは、深刻すぎる事業への影響だ。

(出所:Adobe Stock)
(出所:Adobe Stock)

 9月30日に開催した定例会合のテーマは、「容量市場、衝撃の初回結果を徹底討論」。みんな電力・パワーイノベーション部の梶山喜規部長による容量市場制度についての解説、そしてオンラインアンケート、意見交換の3パートで展開した。小売電気事業者のライセンス保有企業から約100人が参加し、オンラインで意見を交わした(日経エネルギーNextビジネス会議・定例会合)

 電力広域的運営推進機関が9月14日に公表した初回容量市場(2024年度受け渡し分)の約定結果を受けたものだ。約定価格は広域機関が2024年の需要想定などから設定した需要曲線の上限、1万4137円/kWという誰も予想していなかった高値となった「容量市場1兆5987億円の衝撃、電気料金値上げ不可避か」

 会議冒頭で、「容量市場の初回約定結果を見た感想は」とアンケートを取ったところ、参加者の64%が「非常に驚いた」、26.7%が「驚いた」と回答し、合わせて90%を超えた(Q1)。「想定内だった」と答えた人はゼロだったことからも、いかに今回の結果が想定外であったかが分かる。

事前の予想をはるかに上回る高値に驚きの声
事前の予想をはるかに上回る高値に驚きの声
(出所)日経エネルギーNextビジネス会議

 容量市場の仕組みをごくごく簡単に説明すると、国全体で必要な供給力(発電量)を確保するため、小売電気事業者が負担する容量拠出金を発電事業者に渡す制度だ。発電所の建設・運営に必要な固定費の一部を小売電気事業者が負担することで、発電事業者が発電所を維持できるようにするのが目的だ。

 4年後の2024年度の容量拠出金の金額を決めたのが、今回の約定結果だ。約定総額1兆5987億円を、小売電気事業者が市場シェアによって案分して負担する。かねて「高値が付くのではないか」という警戒感はあったものの、新規で最新鋭のガス火力発電所を建設する際のコスト(制度用語では「NetCONE」と呼ぶ)を大幅に超え、制度が設定する上限価格マイナス1円という値段が付いたことは、衝撃的な結果だった。

 各社の負担額は想定をはるかに超える高額となる。約定結果を説明した国の委員会で、新電力大手エネットは「200億円の負担増になる」と明かしている。

 将来の安定供給を担保するための1つの方法として、容量市場制度の必要性に納得していたとしても、過不足のない適正な金額であることが必要だ。今回の結果に新電力は騒然とするのは当然だろう。


容量市場で利益が消え、事業継続が危ぶまれる

 アンケート結果で特筆すべきは、「容量市場の自社事業への影響は」という質問に対して、会合参加者の75%が「事業継続が危ぶまれる」と回答したことだ(Q2)。

新電力事業は容量市場で継続困難に
新電力事業は容量市場で継続困難に
(出所)日経エネルギーNextビジネス会議

 さらに、「事業規模の縮小があり得る」が12.5%で、約9割の新電力関係者が事業への深刻な影響があると考えていることが分かった。「現状は維持できる」は4.7%にとどまり、「十分に成長できる」との回答はゼロだった。会員企業からは、「経済的なインパクトは甚大」「資金調達や信用力評価に影響が出る水準」「利益ゼロになる」といった意見が聞かれた。

 容量拠出金の具体的な負担額を問うと、「100億円以上」が7.4%、「10億円以上」が33.8%、「5億円以上」が7.4%、「1億円以上」が14.7%となった(Q3)。しかも、この金額は利益をすべて吹き飛ばしてしまうほどの大きさだ。

容量拠出金の1社当たりの負担額は非常に高額だ
容量拠出金の1社当たりの負担額は非常に高額だ
(出所)日経エネルギーNextビジネス会議

 負担額が自社の売上高と利益水準に占める割合を聞くと、売上高に占める割合が「10%以上」が20.3%、「5%以上」が40.6%だった(Q4)。

売上高に占める割合が5%を超える新電力が6割超
売上高に占める割合が5%を超える新電力が6割超
(出所)日経エネルギーNextビジネス会議

 さらに、負担額と利益の関係を問うと、「利益水準を大きく上回る(2倍以上)」が16.7%、「利益水準を上回る(2倍以下)」が27.3%、「利益水準と同程度」が16.7%と続いた。「利益水準を下回る」と回答したのは9.1%にとどまった(Q5)。

 新電力事業に必死で取り組んでも、新制度が利益を全て飲み込んでしまう、あるいは利益を上回る負担を強いられる。これでは、事業継続が難しいと答えるのも当然だろう。

容量拠出金で新電力事業の利益はすべて吹き飛ぶ
容量拠出金で新電力事業の利益はすべて吹き飛ぶ
(出所)日経エネルギーNextビジネス会議