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 市場拡大が見込める産業用ロボット市場で、オムロンが攻勢をかけている。その戦略製品が、2020年7月に発売した新型コントローラー「NJ501-R」シリーズだ。工場内のロボット以外の機器まで統合制御することで、競合他社と差異化する。収益の柱であるFA(Factory Automation)事業の成長につなげる。

オムロンが2020年7月に発売した新型コントローラー「NJ501-R」シリーズ(出所:オムロン)
オムロンが2020年7月に発売した新型コントローラー「NJ501-R」シリーズ(出所:オムロン)
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 新型コントローラーで狙う用途は、ロボットとそれ以外の機器(モーター、センサーなど)が協調して加工や組み立てをこなす自動化システムである。これまで、自動化システムではロボットを制御するコントローラー(ロボットコントローラー)とそれ以外の機器を制御するコントローラー(主にPLC:Programmable Logic Controller)に分かれていた。自動化システム全体の動作速度や精度を高める上で大きな制約になっていた。

従来の自動化システムは、ロボットコントローラーとそれ以外の機器のコントローラー(図ではPLC)が分かれており、速度や精度の向上に制約があった。両者を統合した新型コントローラーでは、ロボットを含む全ての機器をまとめて制御できるので、速度や精度を高めやすい(日経クロステックが作成)
従来の自動化システムは、ロボットコントローラーとそれ以外の機器のコントローラー(図ではPLC)が分かれており、速度や精度の向上に制約があった。両者を統合した新型コントローラーでは、ロボットを含む全ての機器をまとめて制御できるので、速度や精度を高めやすい(日経クロステックが作成)
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 新型コントローラーは、ロボットコントローラーの機能をPLCに統合したものである。自動化システムの速度や精度を高めやすくなるほか、構築の時間や手間を減らせるという。「従来は人にしかできなかった作業を自動化できるようになる」(オムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー ロボット推進プロジェクト本部長の山西基裕氏)。例えば、力や角度を加減しながら部品を挿入する作業などが挙げられる。

新型コントローラーで狙っている用途の例。従来は人にしかできなかったような作業の自動化を想定している(オムロンの資料を基に日経クロステックが作成)
新型コントローラーで狙っている用途の例。従来は人にしかできなかったような作業の自動化を想定している(オムロンの資料を基に日経クロステックが作成)
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 自動化システム構築のハードルを下げる意義は大きい。職人的な技術者によって構築されていることが多いからだ。日本では職人的な技術者が定年退職で減りつつある。各社は技術やノウハウの継承を急ぐが、一朝一夕で身につくものではない。自動化システムの需要は増えているのに、それを担える技術者は減っているのである。新型コントローラーによって自動化システムを構築できる技術者が増えれば、需要拡大を加速させられる。オムロンはそこに商機を見いだしている。

制約を生んでいた制御方式の違い

 従来の自動化システムにおいて、動作や精度を高めにくく、構築に時間や手間がかかるのは、PLCとロボットコントローラーの制御方式が異なるからである。

 PLCでは、サイクリックスキャン型と呼ばれる制御方式を採用している。端的にいえば、ひとまとまりのプログラムを非常に短いサイクルで繰り返し実行するというものだ。自動化システムでは、複数の機器の制御をなるべく同じタイミングで実行したい。かつてはこの役割を物理的なリレー回路が担っていた。PLCは、それをコンピューターで再現したものであり、1サイクルの時間(スキャンタイム)をミリ秒オーダーに縮めることで、実質的な“同時実行”を達成している。

 一方、ロボットコントローラーでは逐次実行型と呼ばれる制御方式を採用している。プログラムを記述順に1行ずつ実行するものである。実際には並列処理などの手法によって“同時実行”に近づけるが、それでもPLCのスキャンタイム内には収まらない。

 自動化システムでは、PLCが全体を制御する役割を兼ねることが多く、そこにロボットおよびロボットコントローラーがぶら下がる構造になる。PLCから見れば、異なる時間軸で動作するロボットを待つ形になるので、実現できる速度や精度には限界がある。加えて、自動化システムの構築に当たっては、ロボットの動作とPLCで制御する部分の動作をそれぞれ作り込んだ上で、ロボットコントローラーとPLCを接続し、同期を取るなどの作業が必要となる。時間や手間がかかる要因にもなっていた。

 両者を統合した新型コントローラーでは、ロボットを他の機器と同様に扱える。オムロンは詳細を明かさないが、逐次実行型制御プログラムをスキャンタイム内で実行できるような処理を加えた上で、サイクリックスキャン型制御プログラムの一部として走らせるイメージだという。