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 三菱総合研究所(三菱総研)とグループ企業のエム・アール・アイリサーチアソシエイツ(東京・千代田)は、人工知能(AI)と解析計算(CAE)を組み合わせた製品仕様の策定支援システム「CAE4CTO」を開発中だ。産業用設備機器メーカーなどに向ける。

 従来なら数カ月を要した設備機器の仕様策定を10分程度で可能にする。産業用設備機器メーカーはこれまで、顧客による要求仕様の策定(要件定義)を待って、設備を設計・生産する受注設計生産(ETO、Engineer to Order)方式を採らざるを得ないケースが多かったが、メーカー側から複数の最適化した設計案を顧客に提示して、最終的な製品仕様を決める受注仕様生産(CTO、Configure to Order)方式に転換できる。AIとCAEの組み合わせで要件定義と設計提案のプロセスを圧縮し、商談開始から受注・納品までの期間を大幅に短縮するのを目指す。

 三菱総研らがシステムの開発を急ぐ背景には新型コロナウイルス感染症の流行がある。「潮目が変わった。企業は変化への機敏な対応が以前にもまして必要になっている。CAE4CTOは顧客要求の変化への素早い対応に向けた取り組み」(三菱総研デジタル・トランスフォーメーション部門企業DX本部製造DXグループリーダー主席研究員の小橋渉氏)という。ETOを採らざるを得なかった設備機器メーカーなどが業務内容をCTO化して競争力を強化するための手段になるとする。

AIで多様な製品構成を生成、CAEで検証

 三菱総研グループはもともと、ルールベースのエキスパートシステムによって実現したAIコンフィギュレーターを提供した実績を持つ。AIとしては1世代前の技術だが、製品を構成するユニット間の組み合わせルールから、製品として成立する構成を自動的に生成できる。このコンフィギュレーターで生成した多様な製品構成についてCAEによる解析計算を実行しておき、その結果をAIコンフィギュレーターにフィードバックしておくというのが基本のアイデアだ(図1)。

図1 これまで1カ月以上かかっていた提案を10分で策定
図1 これまで1カ月以上かかっていた提案を10分で策定
三菱総研グループが開発している受注生産型企業のためのシステム「CAE4CTO」。さまざまなバリエーションを生成して検証し、製品としての機能や性能を把握し、顧客の要求に応じて提案できるようにしておく。(三菱総研グループの資料を基に日経クロステックが作成)
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 事前のCAEの計算結果により、特定の特性を得るのに有利な構成や、コストを抑えられるユニットの組み合わせなどの情報をAIコンフィギュレーターに織り込める。顧客との商談時には、要望に対して10分程度で仕様を提案可能。複数の要求事項のバランスなどを聞きながら、複数案を生成して、その中から最終的に受注仕様を決めるという進め方が可能になる。

 産業用設備機器メーカーの多くは、顧客が詳細に決定した製品仕様(要件定義)を忠実に実現するETO方式を採っている。複雑な産業用機器などでは、顧客が要件定義した設備をどのくらいの納期とコストで製作できるかをメーカーが検討して提案するのに数週間から数カ月を要する。このため複数の製品仕様を比較検討するのは難しく、顧客も経験と知識の範囲内で仕様を決め打ちするしかなかった。

 しかし提案を10分で作成できれば、複数案の比較検討が可能になる。メーカーは顧客にコンサルティングしつつ、受注仕様を決めるCTOの形態に移行できる。提案は一定の期間とコストでの実現を約束する必要があるが、それを事前のCAE計算で担保しておくわけだ。顧客との打ち合わせで決定した仕様に対しては、さらに詳細に設計検討を加え、製造上の細かい仕様を決めていくが、事前に概要設計を最適化できているのでコストや納期が大幅にブレることは起こらない。