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 SUBARU(スバル)が2020年10月15日に満を持して発表した中型ステーションワゴンの新型「レヴォーグ」。運転支援システム「新世代アイサイト」のステレオカメラのサプライヤーが、日立オートモティブシステムズからスウェーデンVeoneer(ヴィオニア)に変わった。ステレオカメラで業界をけん引してきた日立オートモティブは、どう巻き返しを図るのか。同社CTO(最高技術責任者)に次の一手を聞いた。

 日立オートモティブの先進運転支援システム(ADAS)や自動運転(AD)に関する基本戦略は、ステレオカメラを中核のセンサーと位置付け、同カメラにADAS/AD用ECU(電子制御ユニット)、パワートレーンシステム、シャシーシステムなど自社のコア技術を組み合わせたソリューションとして提供することである。

3世代のステレオカメラを開発

 この基本戦略の下でステレオカメラについては、「自動車メーカーの要求や世界の予防安全基準に対応できるように性能を進化させてきた」(同社エグゼクティブオフィサーでCTO兼チーフルマーダビジネスオフィサー兼技術開発統括本部長の山足公也氏)という(図1)。こうした戦略に基づいて小型ステレオカメラでは、これまでに3世代の製品を開発した。

山足公也氏
図1 日立オートモティブシステムズの山足公也氏
「自動車メーカーの要求や世界の予防安全基準に対応できるように、カメラの性能を進化させてきた」という。(出所:日立オートモティブ)
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 第1世代のカメラ(従来カメラ)では、同カメラを使う自動ブレーキを昼間の車両や歩行者に対応させた。第2世代のカメラ(現行カメラ)を使う自動ブレーキは、昼間の車両や歩行者、夜間歩行者に対応する。

 2019年12月に発表した第3世代のカメラ(新型カメラ)が対応するのは、昼間の車両や歩行者、夜間歩行者に加えて、交差点の右左折である。交差点に対応するため、カメラを広角化した。交差点での右折時の対向車、右左折時の横断歩行者や自転車を検知して、自動ブレーキを作動させる。

新世代アイサイトでは他社に軍配

 一方、スバルが採用する大型ステレオカメラについてもこれまで、昼間の車両や歩行者、夜間歩行者を検知できるように改良してきた。前述したように、日立オートモティブの広角化した小型の新型カメラは、交差点の右左折にも対応する。だが新世代アイサイトのステレオカメラでは、ヴィオニアに軍配が上がった。

 この点について日立オートモティブの山足氏は、「新世代アイサイトのステレオカメラについては、スバルから仕様などの提案要請を受けた。それに応えるための提案を行ったが、残念ながら採用されなかった。ただ、スバルには今回の新型カメラではなく、別のカメラを提案した。スバルから失注した後に、新型カメラの開発を始めた」と明かす。

 スバルが新世代アイサイトで最も重視したのは、自動ブレーキを交差点の右左折に対応させることだった。そのためヴィオニアのカメラは、従来のカメラの検知距離を維持しながら、水平視野角を約2倍に拡大した。カメラを広角化したことで、見通しの悪い交差点での出合い頭の衝突回避などにも対応できるようになった。

 またヴィオニアのカメラは、データ処理用の半導体チップを従来のASICから米Xilinx(ザイリンクス)のFPGA(Field Programmable Gate Array)に変更した。スバルはFPGAを採用した理由として、(1)開発スピードを速められる、(2)性能やコストを改善しやすい、(3)回路規模をスケーラブルに変えられる──という3点を挙げる。カメラ自体の性能やコストだけでなく、開発の自由度の高さも採用の決め手になったとみられる。