政府は自由なデータ流通を目指すWebアーキテクチャー「Trusted Web」の検討を始めた。中核となるのが新たな個人認証の仕組み「分散型ID」だ。2021年4月に日本で開催する世界経済フォーラムのグローバル・テクノロジー・ガバナンス・サミット(GTGS)に合わせて分散型IDのアーキテクチャーやシステム要件などをまとめたホワイトペーパーを作成し、各国政府や企業に提案する予定だ。
信頼性を確保したインフラ構築
政府は内閣官房デジタル市場競争本部に「Trusted Web推進協議会」を新たに設置し、2020年10月15日から議論を進めている。座長を務める慶応義塾大学の村井純教授は「デジタル社会に基盤となるアーキテクチャーを聖域なく議論していく」と同協議会の狙いを話す。
データやサービス、コミュニケーション対象などの信頼性を担保したデジタル基盤を構築するために、まず焦点となっているのが個人認証の在り方だ。Trusted Webは現在サービスごとに行われている個人認証をサービス横断で活用でき個人が完全に制御できるようにしていくことを目指す。
同協議会で技術検討を行うタスクフォースの座長を務める企(くわだて)のクロサカタツヤ代表取締役は「様々なインターネットサービスの既存の認証機能を活用しながら連携させていく。それには『分散型ID』が最も現実的でリーズナブルだ」と説明する。
完全に個人が制御できるID
分散型IDとは何か。現在のインターネットサービスでは、サービス提供者である巨大IT企業などがIDを発行し、中央集権的に管理する。これに対し分散型IDでは、ID発行主体が主に個人になる。このIDにサービスごとに発行されるIDなどを関連付けることで、各サービスの目的や用途に応じた情報提供といった、個人による制御を可能にする。