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 自然災害や気象現象の予測モデル研究に利用されている海洋研究開発機構(JAMSTEC)のスーパーコンピューター「地球シミュレータ」の次世代機が、2021年3月に動き出す。NECがシステム設計を手掛けた。現行システムの4~8倍の速度でプログラムを処理できるようになる。試行回数の増加や範囲の細分化が可能になり、自然現象の予測研究が大きく加速する。

現行の地球シミュレータ
現行の地球シミュレータ
(出所:JAMSTEC)
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 4代目となる次期地球シミュレータは、現行システムと比べて大きく2つの点が変化している。1つは性能向上である。総理論演算性能は19.5ペタ(P)FLOPSと3代目の14.9倍になり、主ストレージ容量は61.4Pバイトで12.8倍となった。

 演算性能が向上したことで、予測範囲を細かくして解像度を高められる。さらに、「計算速度は4~8倍に向上するのではないか」(JAMSTEC地球環境部門環境変動予測研究センター センター長の河宮未知生氏)。計算速度が向上すれば、同様の条件で確率的に発生するさまざまな結果を予測しやすくなる。加えてストレージ容量が増えたことで、扱うデータの大容量化が可能になった。

 もう1つの変化は、そのシステム構成である。現行システムはNECのベクトル型スーパーコンピューター「SX-ACE」を中心とした単一構成のベクトル計算機だった。一方、次期地球シミュレータでは、NECのベクトル型スーパーコンピューター「SX-Aurora TSUBASA B401-8」684台に加えて、スカラー計算機としての性能を増強するため米AMDのサーバー向けx86マイクロプロセッサー「EPYC」を導入。さらに、米NVIDIAのGPU「A100」を組み合わせたマルチ構成とした。

 NECが35年以上取り組んできたベクトル型計算機は、単一コア当たりの演算性能の高さが特徴で、地球環境や自然現象など多数のデータを同時に扱う大規模な計算に向く。一方で、深層学習(ディープラーニング)などの用途では、GPUによる計算の方が高い性能を得られる場合があるという。「研究者のニーズが多岐にわたってきたため、今後はGPUが必要になると考えた」(JAMSTEC付加価値情報創生部門地球情報基盤センター計算機システム技術運用グループ グループリーダーの上原均氏)。

NECの「SX-Aurora TSUBASA B401-8」の仕様例
NECの「SX-Aurora TSUBASA B401-8」の仕様例
同社の「ベクトルエンジン」と呼ばれる拡張カード型のモジュールを8基搭載する。次期地球シミュレータでは、SX-Aurora TSUBASA B401-8を684台使用し、ベクトル計算機部分の理論演算性能は13.4PFLOPSとする。全体の制御はAMDのマイクロプロセッサーが司る。(出所:NECの資料)
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2020年6月発表のNECの第2世代ベクトルエンジン「Type 20A」「Type 20B」を搭載
2020年6月発表のNECの第2世代ベクトルエンジン「Type 20A」「Type 20B」を搭載
SX-Aurora TSUBASA B401-8には、2020年6月に発表したベクトルエンジン「Type 20A」もしくは「Type 20B」を搭載する。それぞれ10コアと8コアのモデルで、2017年に発表した第1世代製品と比べてメモリー帯域が1.53TB/sと大幅に向上したのが特徴。膨大なメモリーに頻繁なアクセスが必要な計算では、「富岳」に用いられるMPU「A64FX」の約1.5倍のベンチマーク性能を示したという。(出所:NECの資料)
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