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 弱視者が眼鏡で視覚を回復したように、視覚障がい者でも健常者と同じような生活ができるようにしたい――。今、そんな思いでオムロンが開発を進める技術がある。それが「カメラ映像から周囲を認識し、ユーザーに音声で情報を伝達するシステム(以下、同システム)」だ。同システムの2020年9月時点での試作システムは、ユーザーの肩に乗せる小型カメラと、パソコンの入ったリュック、情報提示用のスピーカーからなる(図1)。カメラの映像をパソコンで解析し、外界の情報を音声でユーザーに伝える。

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図1 システムを構成するカメラ、スピーカー
図1 システムを構成するカメラ、スピーカー
肩に搭載したカメラで前方を撮影し、知人がいるかなど周囲を確認する。背中のスピーカーで周囲の状況を伝える。
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 流れる音声は、次のようなものだ。「山本さん」「1m」「こちらを見ている」「笑っている」。知り合いがいるのか、こちらに注目しているのかなどの状況を伝える。「視覚障がい者の人たちが(少し離れたところからでも)自ら知り合いを見つけられるようになったり、会話中の相手の表情が分かったりするようになれば、より深いコミュニケーションが可能になるはず」。オムロン技術・知財本部センシング研究開発センタ画像センシング研究室主査の山本和夫氏は技術開発を通して、コミュニケーション支援技術の未来をそう語る。オムロンは同システムから開発を開始しており、2020年9月末に商業施設「コレド室町」で実験を実施した。

盲導犬ロボット「AIスーツケース」への搭載狙う

 オムロンは同技術を、視覚障がい者向けのスーツケース型ロボット「AIスーツケース」に搭載することを狙っている(図2)。AIスーツケースは盲導犬と同じような能力(自律移動機能)を持つロボットである。同社の他、アルプスアルパイン、清水建設、日本IBM、三菱自動車が協力して同ロボットを開発している。2019年12月に「次世代移動支援技術開発コンソーシアム」も5社で設立した。今後5社そろった実証実験を予定しており、それに向けてオムロンは冒頭のような実験を商業施設で進めている。

図2 次世代移動支援技術開発コンソーシアムが開発する「AIスーツケース」
図2 次世代移動支援技術開発コンソーシアムが開発する「AIスーツケース」
オムロンはAIスーツケースの機能の1つとして、視覚障がい者のコミュニケーション支援を搭載する計画だ。(出典:次世代移動支援技術開発コンソーシアム)
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