ドイツContinental(コンチネンタル)が「HPC(High-Performance Computer)」と呼ぶ統合ECU(電子制御ユニット)の事業に力を入れている。HPCは現在、ボディー系、コックピット系、自動運転系の3つがあり、このうちボディー系はドイツVolkswagen(VW、フォルクスワーゲン)の新型電気自動車(EV)「ID.3」に採用された。
統合ECUは、OTA(Over The Air)によるソフトウエア更新に対応し、高性能なSoC(System on Chip)を搭載する。このSoCを巡って、自動車メーカーや1次部品メーカー(ティア1)が有力な半導体メーカーと提携するなど、囲い込みを目指す動きが活発化している。これに対し、コンチネンタルは「半導体にはこだわらない」と中立的な立場を貫く。
「用途に応じて、その時々で最適な半導体を選択し、コスト競争力を高める」。コンチネンタル日本法人 VNI事業本部長 兼 CCN JOEM 部長の青木英也氏はこう説明する。コックピット系HPCではグラフィックス処理に強いSoC、自動運転系HPCではAI(人工知能)処理に強いSoCを選択する。
ID.3で採用されたボディー系HPCでは、ルネサスエレクトロニクスの車載SoC「R-Car M3」を選択した(関連記事)。この理由について「車載分野で実績があり、求められる性能と消費電力のバランスからR-Carを選んだ」(同氏)とする。ただし、「現在開発している次世代版のHPCでは性能が不足する」(同氏)と述べた。
現在の車載SoCは、選択肢が限られているのが大きな課題だという。例えば、自動運転系で注目されている米NVIDIA(エヌビディア)のチップは性能が高い半面、消費電力も大きく、水冷システムが必要になるなど、車載しにくい面がある。一方、ルネサスのR-CarのようなSoCは低電力だが、性能が不足しがちだ。「ルネサスとエヌビディアの中間くらいの選択肢がない」(同氏)とする。
HPCのようなサーバー指向型の統合ECUは、ID.3で先行的に採用されたものの、多くの自動車メーカーが採用を本格化するのは2023~25年である。このため、「今後、統合ECUの市場が立ち上がれば、さまざまな車載SoCが登場し、選択肢が増えるのではないか」(同氏)と期待を寄せる。コックピット系のSoCでは、米Qualcomm(クアルコム)など、スマートフォン向けSoCメーカーが参入しており、「追い風だ」(同氏)。