デンソーの欠陥燃料ポンプ問題で、リコール対策費⽤の原資となる追加の賠償金が発生したことが分かった。金額は460億円。2020年度(2021年3月期)第2四半期に同社が計上した。主にトヨタ自動車が2020年10月28日に国土交通省に届け出た約266万台の新規リコールへの賠償金に充当する。
デンソーは2019年度(2020年3月期)決算で品質対策費用として2200億円を計上し、「想定し得る分(賠償金)は織り込み済み」と主張していた。つまり、新規のトヨタ車リコールで発生した分は、デンソーの想定を超えた賠償金の支払いということになる。
①「デンソー品質」に大きな亀裂、巨人はこれでつまずいた 340万台超のメガリコール
②品質管理の手抜きが露呈、デンソー欠陥燃料ポンプ 340万台超のメガリコール
③デンソー欠陥問題がホンダに波及、判断遅れ計479万台リコールへ
④デンソーリコール745万台に拡大、追加賠償と転注が不可避か
⑤新規トヨタ車リコールで460億円の追加賠償、デンソー品質問題
賠償金は1個当たり約1万7000円
追加の賠償金である460億円が、全て新規のトヨタ車リコールに投じられたと仮定すると、燃料ポンプ1個当たりの賠償金は約1万7000円*1。1個当たり2000円程度とみられる燃料ポンプの価格に対し、その8.5倍もの賠償金の支払いをデンソーは強いられることとなる。
*1 460億円の内訳について、デンソーは「全てがトヨタ自動車向けというわけではない」(同社広報部)と言う。だが、約266万台というリコールの規模と1件当たりのリコール対策費用を照らし合わせると、そのほとんどが新規のトヨタ車リコール分とみられる。
ところが、業界関係者からは意外な言葉が聞こえてくる。「随分、安く済んだなという印象だ」──。
というのも、このリコール対策として欠陥燃料ポンプを品質改善済みのものに交換する場合、かかる費用が「5万~7万円程度」(同関係者)と見込めるからだ。燃料ポンプを交換する際には、リアシート(ミニバンの場合はセカンドシート)を取り外し、カバー(カーペット)をめくった後、燃料タンク上部にある蓋を外して、欠陥燃料ポンプモジュールを取り出す。その後、品質対策済みの燃料ポンプを取り付け、クルマを元の状態に戻す。これら一連の作業には3時間から半日ほどかかり、この工賃がかさむ。すなわち、交換部品代としての燃料ポンプの単価に工賃が加算され、5万~7万円ほどになるというのである。