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 NECがカナダのD-Wave Systems(ディーウエーブシステムズ)と進める、組み合わせ最適化問題に特化したクラウドサービスの計画が明らかになった。D-Waveが提供する量子クラウドサービス「Leap2(リープ2)」のプロセッサーの一つに、NEC独自のアニーリングマシンを組み込むことを目指す。

Leap2にNECのアニーリングマシンを搭載へ

 NECは2020年6月にD-Waveへ1000万米ドル(約10億円)を出資し、協業したと発表している。今回NECの西原基夫・取締役執行役員常務兼CTO(最高技術責任者)が、NECがD-Waveに対して、Leap2のプロセッサーとしてNECのベクトルプロセッサー「SX-Aurora TSUBASA」を使ったアニーリングマシンを搭載するよう提案したことを明らかにした。すでにカナダのD-Wave本社にSX-Aurora TSUBASAの実機を送った。当面は、開発者向けのハッカソンなどでの利用方法の模索を想定している。

 NECのアニーリングマシンは、組み合わせ最適化問題を解くのに特化したマシンで、ハードウエアにSX-Aurora TSUBASAを使い、専用のアニーリングソフトを組み込んだ。従来のコンピューター(量子コンピューターに対して古典コンピューターと呼ぶ)を使うためリアルタイム計算ではD-Waveのマシンに劣るが、10万量子ビットに相当する大規模な組み合わせ最適化問題に対応するという。

 Leap2はD-Waveが量子クラウドサービスとして2020年2月に発表したもので、リアルタイムで複数の量子システムを提供する。プロセッサーとしては、量子アニーリング方式の量子コンピューターで、量子ビット数が5000以上の「Advantage」や2000量子ビットの「D-Wave 2000Q」などを備える。また、古典コンピューターも組み合わせて最適化問題を解く「ハイブリッド」のアプリケーションを開発するためのソフトも提供している。NECの提案では、ここにプロセッサーの一つとしてSX-Aurora TSUBASAを使ったアニーリングマシンを追加する。

 「Leap2はプラットフォームとしてとても使いやすい」(NEC量子コンピューティング推進室の今昭エグゼクティブグローバルディレクター)ことから、NEC独自でクラウドプラットフォームを提供するのではなく、Leap2経由でNECのアニーリングマシンのサービスを提供することを提案したという。リアルタイムで計算結果を出すにはD-Waveの量子システムが向いているが、スケジューリングなどリアルタイム性がないものはNECのアニーリングマシンで解くといった使い分けも想定している。

アニーリングマシンの活用領域が見えてきた

 NECは2020年1月にソフト開発やマーケティングなど約20人のメンバーからなる「量子コンピューティング推進室」を本社内に新設。SX-Aurora TSUBASAを使ったアニーリングマシンによるPoC(概念実証)サービスを2020年6月から開始した。企業などからの問い合わせは数十件あり、数件では実際にプロジェクトが進んでいるという。実証を進める中でアニーリングマシンを活用する領域も見えてきた。西原CTOは「すでに成果が出ている領域もある」と話す。