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 ハードウエアを主体としたハードとソフトウエアの一体開発――。そうしたこれまでの開発スタイルから、ハードとソフトを切り離して開発するスタイルへとかじを切る従来型自動車メーカーが増えている。例えば、トヨタ自動車グループでは、独自のビークルOS「Arene(アリーン)OS」を介してハードとソフトを分離、同OSを搭載した車両に載せるソフトの開発を効率化する環境(製品開発プラットフォーム)「Arene(アリーン)」の構築を進めている(図1)。ドイツDaimler(ダイムラー)も、ビークルOS「Mercedes-Benz Operating System(MB.OS)」の開発を公表。同Volkswagen(フォルクスワーゲン、VW)に至っては、既に独自のビークルOS「vw.os」を実用化済みだ。

図1 トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(TRI-AD)のオフィスの一角
図1 トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(TRI-AD)のオフィスの一角
2019年12月に公開したTRI-ADのオフィスには、製品開発プラットフォームのアリーンを使って、UX(ユーザー体験)やUI(ユーザーインターフェース)などを開発・検証する環境の整備が進められていた。(撮影:日経クロステック)
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 背景にあるのが、ソフトの内部開発リソースのひっ迫と、ハードからソフトへの付加価値のシフトだ。クルマの電子制御化や車載インフォテインメント(IVI)システムの搭載などが進み、開発しなければならないソフトは増える一方。先進運転支援システム(ADAS)や自動運転、コネクテッド化への対応で、ソフトの高度化・複雑化も進んでいる。ソフト開発を効率化するには、ソフトをハードから切り離してソフトモジュールの流用を促したり、ソフト開発の外注化や円滑化を促したりする取り組みが求められる。そして、ソフトとハードの分離を促すのがビークルOSであり、外注の活用やソフト開発を円滑化するのがAPI(Application Programming Interface)やソフトウエア開発キット(SDK)などを備えた製品開発プラットフォームである。

 ハードからソフトへの付加価値のシフトは、クルマに対するソフトの重要性をこれまで以上に高める。さらに、クルマという製品単体から、コトづくりや社会インフラへとクルマの事業領域を拡大させる。より魅力的なサービスを効率的に開発しサービスを円滑に運用するには、様々な分野の企業や組織との協業が必要になり、サービス開発・運用プラットフォームがその鍵を握る。実際、トヨタでは、NTTと業務資本提携を結び、同社と共同でスマートシティー実現のコア基盤となる「スマートシティプラットフォーム」の構築を進めるなど、次のステップに向けて動き出している(図2)。

図2 スマートシティプラットフォームの概要
図2 スマートシティプラットフォームの概要
(出所:トヨタ自動車、NTT)
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 自動車産業界にみられるこうした動きは、プラットフォームのオープン化を加速させ、自動車産業の構造変化を引き起こす――。こう指摘するのが、PwCコンサルティングでパートナーを務める川原英司氏である(図3)。「プラットフォームのオープン化が、自動車産業への新規参入を容易にし、プレーヤーの増加に伴い自動車産業の構造が大きく変化する」と同氏は説明する。その上で同氏は、既存の自動車部品メーカーに向け「戦略ポジショニングの見直しが必要」と警鐘を鳴らす。

図2 PwCコンサルティングでパートナーを務める川原英司氏
図2 PwCコンサルティングでパートナーを務める川原英司氏
(出所:PwCコンサルティング)
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