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 楽天技術研究所の所長を務めた森正弥氏が、HRテック企業カオナビの技術顧問に就任した狙いと今後の研究・開発活動を語った。新型コロナ禍で働き方が大きく変わりつつある中、著名な技術者・研究者の森氏が見据えるHRテックのサービス像とは。

 森氏がカオナビの技術顧問に就任したのは2020年7月。デロイト トーマツ コンサルティングに執行役員として籍を置きつつ、カオナビにおける人材とITを組み合わせたHRテックの研究開発、ビッグデータや人工知能(AI)を使った技術開発に取り組む。森氏は2006年に楽天に入社後、執行役員 兼 楽天技術研究所代表として世界5カ国7拠点での研究開発を統括。楽天におけるビッグデータ活用の基盤技術開発などを率いた。

カオナビの技術顧問に就任した森正弥氏。カオナビの柳橋仁機社長とはアクセンチュア時代からの付き合い。「言いたいことを言ってほしい」と要望されているという。
カオナビの技術顧問に就任した森正弥氏。カオナビの柳橋仁機社長とはアクセンチュア時代からの付き合い。「言いたいことを言ってほしい」と要望されているという。
(撮影:日経クロステック)
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 「技術のパラダイムシフトと個人の生産性向上の関係については、昔から興味を持っていた。特にここ数年は特定の分野やドメイン(技術や事業の領域)に特化したスタートアップの動きが活発で、注目していた」。森氏はカオナビに転じた背景をこう語る。

 ドメイン特化のスタートアップの中でも、「HRテックの重要性がとりわけ高まっている」とみる。従来とは異なる価値観を持つ若年層が、従業員や顧客の大半を占める時代が間近に迫っているからだ。

 森氏の言う若年世代とは1990年代後半生まれ、年齢で言えば20代半ばの世代だ。物心がついた頃からインターネットやスマートフォンの存在が当たり前。SNS(交流サイト)を使った情報発信をためらわない。1980年代生まれのミレニアル世代、さらにはZ世代などと呼ばれる層が、新入社員や消費者の中核を占めつつある。

 デジタル技術を使いこなす若年層を迎え入れる組織にとって、属人性を廃しデータに基づき能力を評価したり人材を配置したりするHRテックが欠かせないという。事業や業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む上でもHRテックは重要になるとみる。「新たな世代の価値観や行動様式を理解しなければ選ばれるのは難しい」との考えからだ。

 森氏はこれまで取り組んできたAIの研究・開発の知見をHRテックに生かす考えだ。具体的に取り組む分野の1つがデータ拡張(Data Augmentation)。基となるデータセットの「変種」を作り出して、データ量を拡張させる手法である。「十分な量の教師データがない状態でも有用な深層学習のモデルを作るために有効な手法だ」。