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 政府が進めるGIGAスクール構想に対し、経団連と新経済連盟が2020年9月、10月と相次いで提言を発表した。9月16日に発足した菅内閣に向け、予算の拡充などを訴える「注文」とも言える内容だ。教育のICT化を口実に教育市場向けのビジネスを活性化したいだけではないか――。こんな見方もできそうだが、背景には経済界が持つ危機感がある。

経団連と新経済連盟は相次いで提言を出した
経団連と新経済連盟は相次いで提言を出した
撮影:日経クロステック
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高校生にも1人1台端末の配備を

 GIGAスクール構想は全国の小中学校の児童・生徒1人に1台、パソコンなどの学習用端末を配備し、校内LANを整える政府の計画だ。政府は2020年度末までに学習用端末の配備を目指している。学習用端末を活用し、クラス全員に同じ内容を一斉に教えるこれまでの授業方法から、児童・生徒1人ひとりの理解度に応じた個別最適の学習への転換を目指す。

 関連予算は「1人1台端末」の整備費用を中心に4600億円超。政府は端末1台当たり最大4万5000円の補助金を各地方自治体に支給するほか、校内LANの整備や学校で初期対応にあたる「GIGAスクールサポーター」の配置も支援する。オンラインでの学習も想定し、Wi-Fi環境が整っていない家庭に対し自治体がモバイルルーターなどを貸し出す際の費用も一部負担する。

GIGAスクール構想の関連予算
GIGAスクール構想の関連予算
出所:文部科学省
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 これに対し経団連は2020年9月18日、「EdTech推進に向けた新内閣への緊急提言」を発表した。現在の予算では、教育にデジタル技術を活用するEdTechを実践できる環境が自治体に行き渡らないとして、ハード面、ソフト面、教育人材面の3つの観点で予算の拡充などを求めた。経団連は同年3月にもEdTechに向けた環境整備を政府に提言している。

 ハード面では例えば、高校生向けの1人1台端末を来年度から配備することを求めた。GIGAスクール構想の1人1台端末は小中学生向けで、高校生は対象に含まない。

 ソフト面では、学校が使う教育向けアプリの予算拡充などを求めた。現状では1人1台端末が整っても、アプリを買うための資金がないために、「EdTechを実践できない学校も少なくない」(「EdTech推進に向けた新内閣への緊急提言」)。有償のデジタル教科書についても無償化し、将来的に紙の教科書から完全に移行することを求めた。

 新経済連盟は2020年10月14日に「GIGAスクール構想2.0~『PC1人1台』のその先へ~」を発表した。学校への人的支援などソフト面での予算拡充のほか、教育制度の改革も求めた。家庭など学校以外での学びを義務教育の一環とするために、小中学校への単位制導入の検討などを提案している。

 経済界がGIGAスクール構想に相次いで提言する背景には、人材に対する危機感がある。