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 ハックとマラソンを組み合わせた造語である「ハッカソン」。IT(情報技術)エンジニアやデザイナーなどがチームになって特定のテーマについて短時間でアイデアを出し合い、サービスのプロトタイプを作るイベントや作業を指す。新型コロナウイルスの流行で「集まる」ことが難しくなった今、オンラインによる「集まらないハッカソン」が試されている。果たして、オンラインでハッカソンはどこまで可能なのか。その挑戦を追いかけた。

 2020年8月、野村総合研究所の新入社員である内山敦史さんなど5人は、それぞれ自宅からハッカソンに参加し、Zoomを使ってPCの画面越しに向かい合っていた。実はこの5人、野村総研の同期だが、それまで1度も会ったことがない。入社してすぐに在宅勤務態勢がとられたことで、新入社員研修はほぼ全てがオンライン化され、その後もほとんど出社の機会がなかったからだ。

ハッカソン開始時のオリエンテーションやアイデア出しの段階で使用した「Zoom」(資料:ONE JAPAN)
ハッカソン開始時のオリエンテーションやアイデア出しの段階で使用した「Zoom」(資料:ONE JAPAN)
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 彼らが参加したのは、大企業の若手有志団体のコミュニティーである「ONE JAPAN」が開催したオンラインハッカソン。8月22日から30日まで開かれ、18チーム(約80人)が参加した。

 同団体にとってオンラインでのハッカソン開催は初となる。大企業若手の運営メンバーが議論し、多様なツールを使うことで、オンラインでも議論が円滑に進むような工夫をした点がユニークだ。

 まずはどんなツールを実際に使ったのか説明しよう。

 実際に使用したツールは主に5種類ある。(1)ハッカソン開始時のオリエンテーションやアイデア出しの段階は「Zoom」を使った。運営メンバーの1人であるONE JAPANの萩村卓也氏は「一番初めに使うのは、誰もが使い慣れているツールが適していると考えた」と話す。(2)参加者同士のコミュニケーションを円滑にするため、あるイベントに参加した人が自己紹介などを書き込めるサービス「Buddy up!」を活用。(3)運営側からの事務連絡や技術提供企業への質問などはチャットツールである「Slack」を利用した。

 (4)実際の議論や成果発表には、主にカンファレンスなどで使用されることが多いWeb会議ツール「Remo」を使った。Remoの特徴は、バーチャルのカンファレンス会場にいくつもの会議室を設定できることで、どこでどんなチームが議論しているか分かりやすい点にある。チームの内部でコミュニケーションが閉じるのを避ける狙いがあった。

実際の議論や成果発表には、主にカンファレンスなどで使用されることが多いWeb会議ツール「Remo」を使った(資料:ONE JAPAN)
実際の議論や成果発表には、主にカンファレンスなどで使用されることが多いWeb会議ツール「Remo」を使った(資料:ONE JAPAN)
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 (5)最後の5つ目は、主にオンライン懇親会で利用したWeb会議ツール「SpatialChat」。特徴は、オンラインでのコミュニケーションに「距離」の概念を取り入れたことにある。ログインしたユーザーがPCの画面上にアイコンで表示され、マウスなどで自由に画面上を移動することができる。ユーザー同士の距離が近くなれば声が聞こえ、離れると小さくなる。一定の距離が空くと聞こえなくなるという仕様だ。懇親会などで使えば、まるで大きな空間でいくつものグループが会話をそれぞれ楽しんでいるような状態を作り出すことができる。

 運営メンバーの1人であるONE JAPANの川﨑万莉氏は「集まることで形成される『ワクワク感』をどう作るか。ツールの選定ではそこに一番、気を使った」と振り返る。さて、こうした環境を用意したオンラインハッカソン。実際の議論はどのように進んだのか。野村総研新入社員5人のチームの議論を見ていこう。