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 政府は2020年11月6日、2020年度版の経済財政白書を閣議で了承した。新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて例年の7月ごろから公表時期を延期した今回、焦点となったのは日本がコロナ禍でデジタル技術をうまく活用できなった理由の考察だ。ITへの投資と人材確保が不十分だった点を、白書は主因として挙げた。

 「日本のIT人材がIT産業に偏り過ぎており、ITを活用する側のユーザー企業や行政機関などに所属するIT人材が大きく不足している」という白書の指摘は、特に注目すべきだ。このIT人材の偏りによって、システムの発注側と受託側の間で情報や知識の差が大きくなっていることを懸念している。

 システムの調達や運用でITベンダーへの依存が過度になっており、ユーザー側が適切な発注や判断ができていない可能性を指摘したといえる。

IT人材、欧米先進国は過半数が非IT産業に所属


 白書では、米国、英国、ドイツ、フランスの欧米4カ国と日本との比較で、日本はIT人材がIT産業に偏在している状況を示している。比較では、総務省の国勢調査や労働力調査に加え米労働統計局など各国統計を用いた。

日本と欧米4カ国で比較した、IT産業と非IT産業に属するIT人材の割合。日本が突出してIT人材がIT産業に偏在している。総務省による国勢調査と労働力調査、各国の労働統計から内閣府が作成した
日本と欧米4カ国で比較した、IT産業と非IT産業に属するIT人材の割合。日本が突出してIT人材がIT産業に偏在している。総務省による国勢調査と労働力調査、各国の労働統計から内閣府が作成した
出所:内閣府
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 その集計によると、日本はIT人材の72.3%がIT産業で雇用されており、非IT産業に従事する人材は27.7%にすぎない。一方、比較対象の欧米4カ国はいずれもIT人材の過半数が非IT産業で雇用されている。米国の64.5%を筆頭にドイツが61.4%で続き、英国とフランスも53%台に達する。

 米国や英国でユーザー側の産業が多くのIT人材を雇用できている理由は、雇用の流動性が高いためと以前から指摘されてきた。例えば米英のユーザー企業は、大規模な基幹システム構築・更新に合わせて、数年間と期間を区切って優秀なIT技術者を雇用しやすい環境がある。米国では連邦政府や州政府もIT人材を短期で雇用し、大規模なIT調達やシステム内製化に生かしている。

 米英より雇用流動性が低いとされているドイツやフランスでも、ユーザー企業がIT人材を多く雇用していることが今回の白書が示した調査から分かる。先進主要国の中でユーザー側にIT人材が決定的に不足していることが、日本の課題だといえる。