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 「小声で耳打ちできない」「正確に聞き取ってもらえず、肯定したのに否定と受け取られた」「パソコンの操作ミスで会議が阻害された」——

 日経ものづくりが2020年10月初旬に実施した「製造業におけるリモートワーク/在宅勤務」に関するアンケート調査の結果では、Web会議に対するこんな不満の声が目立った。リモートワークが常態化する中、ささいだが積み重なると大きくなる「リモートストレス」に頭を悩ます人が増えているようだ。

あなたが所属する部署が実施しているWeb会議システムなどによるリモートワーク(社内)は次のうちどれですか
あなたが所属する部署が実施しているWeb会議システムなどによるリモートワーク(社内)は次のうちどれですか
回答者数:250(出所:日経ものづくり)
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 所属部署で実施しているWeb会議の用途を尋ねた設問には、「事務的な打ち合わせ」との回答が最も多かった。「社内」相手では全体の8割、「取引先など社外」相手のWeb会議でも7割弱を占めた。この回答からWeb会議の大多数が大人数の会議や重要な意思決定ではなく、日常的な打ち合わせに利用されている実態が見えてくる。新型コロナ前なら相手の席に行ったり、立ち話や部署内のテーブルでサッと集まったりして実施できていた類いの打ち合わせも多いはずだ。

あなたが所属する部署が実施しているWeb会議システムなどによるリモートワーク(取引先など社外が対象)は次のうちどれですか
あなたが所属する部署が実施しているWeb会議システムなどによるリモートワーク(取引先など社外が対象)は次のうちどれですか
回答者数:250(出所:日経ものづくり)
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 「リモートワーク/在宅勤務について感じていること」に関する自由回答を見ると、対面のリアルな打ち合わせではあまりない、低品質な音声に起因するささいなトラブルや、ITスキルが低い参加者のパソコンの操作ミスによる会議の中断などに対する不満が散見された。これらの不満に対してほとんどの回答者が、「1つひとつはたいしたことではない」と口をそろえるのも特徴的だ。逆にささいだからこそリモートワークの問題として強く指摘せざるを得ない状況なのは間違いなさそうだ。

「一声かけられない」という問題

 Web会議は参加者間の「距離」が均等になる。カメラで撮影された映像は参加者全員に見える。マイクを通した発言は参加者全員に聞こえる。だから、「小声で耳打ちできない」という問題を挙げるのは、自動車等輸送機器メーカーの生産技術・生産管理に関わる回答者だ。

 回答者が以前の会議で報告済みだった内容を上司が失念して再度の報告を促したという。リアルの会議であれば、それは報告済みだと上司に小声で耳打ちすれば流せる。だがWeb会議ではそれを言うと参加者全員に聞こえてしまう。上司の立場に配慮して、回答者は特に断らずに以前と全く同じ内容の報告をしたという(回答1)

 「一声かけられない」不満を抱えているとの回答もあった(回答2)。出社していれば、オフィス内で一声かけてすぐにセッティングできる会議も、リモートワークではグループウエアで参加予定者のスケジュールを確認し、その上で電子メールやチャットでの調整が必要になる。会議資料の翻訳の表現について相談する程度のことでも、こうしたやり取りが必要になるケースもあるようだ。「ちょっとした相談ができない」と、回答者は Web会議のストレスを指摘する。

 Web会議では、参加者の発言は全てマイクを通し、通信ネットワークを介して、スピーカーから聞こえる。どうしてもリアルな会議での発言に比べて聞き取りづらくなる。発言を正確に聞き取ってもらえず、相手の発言を肯定したのに、「否定した」と誤解され、「事前の打ち合わせと話が違う」などと言われてしまうケースもあったようだ(回答3)

 この他、Web会議の音声の質が低くて聞き取れなくても、発言者が上司だったりすると、発言内容を何度も聞き返すのをちゅうちょしてしまい、それにストレスを感じているという回答もあった(回答1)

 目立ったのが「ITスキルが低い参加者が会議の流れを乱す」という指摘だ(回答4)。Web会議中に突然、誤操作でもしたのか「退出」してしまったり、「画面共有」にまごついたりする参加者がいると、最悪の場合は時間切れで中途半端のまま会議が終了してしまう。この回答者は、最低限のスキルを身に付けるのはもちろんだが、近隣にいる人に操作方法などを確認できる環境が整う「サテライトオフィス」の有効性を指摘する。

 リモートワーク/在宅勤務の常態化が確実視される中、こうしたささいに見える「リモートストレス」が増大しているのは間違いない。リモートワーク従事者が慣れれば解決できる問題もあるだろうが、通信環境の整備や質の高いマイクやカメラの支給などのハードウエアの充実も、ささいだが大きな「リモートストレス」問題の解決には必要だろう。

回答者プロフィル
調査方法:ニュース配信サービス「日経ものづくりNEWS」の読者を対象に、アンケート用URLを送付して回答を依頼。2020年10月1日~10月5日に実施し、250の回答を得た。
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