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 新型コロナウイルス禍での国内企業のIT投資は今後、全体的には増額基調だが、業種や規模によって明暗が分かれそうだ。ITコンサルティングや調査を手掛けるアイ・ティ・アール(ITR)が2020年11月12日に発表した「IT投資動向調査2021」では、2020年度(2021年3月期)にIT投資を増やすと回答した企業の割合は2019年調査時の2020年度予想を上回った。一方で、減額すると回答した企業の割合も予想を上回った。

 調査は2020年8月21日から9月1日に日本企業でIT戦略やIT投資の意思決定に関わる役職者を対象に実施した。有効回答は2667件だった。2020年度のIT投資額を前年度から「増額」するとした企業の割合は36%と前年調査時の2020年度予想(34%)から2ポイント増えた。一方で、「減額」するとした企業の割合は前回調査時の予想(9%)から6ポイント増え15%に至った。特に売上高が10億円規模の中小企業や、サービス業や建設業、不動産業で減額傾向が見られた。

国内企業のIT予算額の増減傾向
国内企業のIT予算額の増減傾向
(出所:アイ・ティ・アール)
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2021年度もIT投資の増加基調が続く予想

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて自社のIT戦略遂行の変化を尋ねたところ、「大いに加速すると思う」が13%、「やや加速すると思う」が37%と半数が加速基調にあるとした。これに対し、「やや減速すると思う」は14%、「大いに減速すると思う」は6%と合計で2割が減速基調と回答した。「変わらないと思う」は31%だった(四捨五入の関係で合計は100にならない)。

 ただ新型コロナ禍が進むなか、加速の意欲に少しブレーキがかかっている。同社は本調査の約4カ月前、2020年4月24日から27日にも同様のアンケート調査を実施した(有効回答は1370件)。その結果と比べると、今回は「加速する」とした回答の割合が大きく減り、「変わらないと思う」「減速すると思う」が増えた。

 具体的には2020年4月調査では自社のIT戦略の遂行が「大いに加速すると思う」は27%で、「やや加速すると思う」が44%と全体の7割が加速基調としていた。最新調査と21ポイントの開きがある。一方で「やや減速すると思う」は5%で、「大いに減速すると思う」は2%であり、減速基調としたのは全体の7%で、最新調査より13ポイント少なかった。「変わらないと思う」は最新調査より9ポイント少ない22%だった。

 IT戦略遂行を加速させる意欲はこの4カ月で後退したものの、ITRは全体としてはIT投資は増額基調を保ち、2021年度も同様の傾向が続くとみている。調査を担当した舘野真人シニア・アナリストは、「2008年に起きたリーマン・ショック時のように、発生翌年に大きく(IT投資が)落ち込むかというとそうでもなさそうだ。景気動向にかかわらずIT投資が必要とされるようになってきたのではないか」と説明する。国内企業のIT投資動向はリーマン・ショックの翌年に大きく減額傾向となったが、ここ10年近くは景気動向と連動せず、比較的一定を保っているという。