マツダが2020年10月8日に日本で発売した小型SUV(多目的スポーツ車)の新型「MX-30」は、標準搭載した先進運転支援システム(ADAS)「i-ACTIVSENSE」の主要機能である自動ブレーキを交差点に対応させた(図1)。
同社の車両で自動ブレーキを交差点に対応させたのは今回が初めてだが、対象となるのは右折時に対向車線から直進してくる車両(対向車)である。交差点を右左折する際の横断歩行者やサイクリスト(自転車運転者)には対応していない。
新型車では、センサー(単眼カメラとミリ波レーダー)のハードウエアの仕様は変えず、ソフトウエアの改良によって、自動ブレーキを交差点の対向車に対応させた注1)。マツダの統合制御システム開発本部で主査の中島康宏氏は、「横断歩行者などに対応させるには、カメラの広角化が必要になる」と話す。
今回の新型車はフロントウインドー上部の室内側に単眼カメラを搭載し、前部バンパー下部にミリ波レーダーを装着する。主に単眼カメラで対向車を検知し、ミリ波レーダーの情報も使う(図2、3)。
センサーフュージョン処理を改善
単眼カメラの水平視野角は、従来と同じ約50度である。水平視野角が50度程度であれば、交差点で対向車を検知できるという。右折時に方向指示器を操作すると、自動ブレーキが作動する。
自動ブレーキの作動条件は自車の車速が4~20km/h、対向車の車速が20~60km/hの場合である。自車が右折しようと交差点に進入し、対向車が減速せずに直進してきた場合に、衝突の危険があると判断すると自動でブレーキをかける。
単眼カメラとミリ波レーダーの情報を統合処理するECU(電子制御ユニット)のソフトを改良し、自車位置や対向車の位置、対向車の車速などの情報を基に、交差点の右折時に自動ブレーキを作動させるかどうかを判断できるようにした。
具体的には、「前方の車両や歩行者を対象にした従来の自動ブレーキ用制御ソフトに、交差点の右折時における対向車を対象にした新たなシナリオを追加した」(中島氏)という。また、センサーフュージョンの処理を改善して、対向車の認識性能を向上させた。