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 ソフトバンクが「海洋進出」を着々と進めている。これまでほとんど整備されていなかった船舶向けのインターネット接続インフラを整備し、自動航行やIoT(インターネット・オブ・シングズ)などの用途開拓にも乗り出す。早ければ2022年の商用化を目指しているといい、文字通りの「ブルーオーシャン」開拓となるか。

Kuバンドと4G併用、自動航行狙い高精度測位も

 2020年11月中旬のある日、船内のあちこちに複数のアンテナを備え付けた1隻の船が、東京・豊洲の桟橋からゆっくりと動き出した。旭タンカー、エクセノヤマミズ、商船三井、三菱商事の4社の共同出資会社であるe5ラボの実験船だ。同社の実証プロジェクトには22社・1団体が参画して複数の実験に取り組んでおり、ソフトバンクもその一環で船舶向けインターネット接続インフラを検証した。

e5ラボの実験船。ソフトバンクの衛星通信の実証実験で使用した
e5ラボの実験船。ソフトバンクの衛星通信の実証実験で使用した
(撮影:日経クロステック)
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 実験船の屋根には2種類のアンテナが取り付けられている。1つはKuバンドと呼ばれる12ギガ~18ギガヘルツ帯の衛星通信用アンテナ。もう1つはLTE方式の4G(第4世代移動通信システム)のダイバーシティーアンテナだ。陸上にある4G基地局からの電波が届く沿岸部を航行中は4G回線に優先接続し、沖合に出ると自動的にKuバンドの衛星通信に切り替わる。「Kuバンドでも下りで毎秒数十メガビットの実効速度が出る」(ソフトバンクの担当者)。

実験船の屋根に取り付けられた、Kuバンドの衛星通信用アンテナ
実験船の屋根に取り付けられた、Kuバンドの衛星通信用アンテナ
(撮影:日経クロステック)
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実験船の屋根に取り付けられた4Gのアンテナ。2基でダイバーシティー(複数)構成としている
実験船の屋根に取り付けられた4Gのアンテナ。2基でダイバーシティー(複数)構成としている
(撮影:日経クロステック)
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 実験船の通信に使ったKuバンドの帯域は、ソフトバンクが米Intelsat(インテルサット)から賃借している日本国内向け帯域である。主にソフトバンクの基地局のバックホール(中継回線)として自社利用しているが、「日本の排他的経済水域(EEZ)内であればおおむね通信できる」(同)というカバー範囲の広さに着目し、船舶向け衛星通信のインフラ回線としても使えると白羽の矢を立てた。