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 世界の累計感染者数が5000万人を超えた新型コロナウイルス感染症。日本では「第3波」が鮮明になり、欧米でも感染者の増加ペースが加速している。新型コロナと向き合う「ウィズコロナ」の状況が長期化せざるを得ない中で、モビリティーへのニーズが変化してきた。キーワードは「安心感」である。

 「もともとは人手不足の解消を目的に開発を進めてきたが、新型コロナで状況が一変した。今は『非接触』である点を重視して、実用化に向けた取り組みを加速させている」

 こう語るのは、フランスの大手部品メーカーValeo(ヴァレオ)の日本法人でCTO(最高技術責任者)を務める武内稔氏(ヴァレオジャパン執行役員)である。ウィズコロナ時代の変化に対応しながら開発中なのが、自動運転機能を備える小型配送車「eDeliver4U」である(図1)。

図1 ヴァレオが開発した小型配送車「eDeliver4U」
図1 ヴァレオが開発した小型配送車「eDeliver4U」
LIDARやカメラ、ミリ波レーダーなどを搭載し、自動運転できる。(撮影:日経Automotive)
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 ヴァレオはeDeliver4Uを2020年1月に米ラスベガスで開催された展示会「CES 2020」で初披露。中国で出前アプリを手掛ける美団(Meituan)と共同開発することを発表し、「22年から23年ごろに商用展開を始める」(ヴァレオの担当者)としていた。

 美団は20万人の配達員を抱えるネット出前の大手である。スクーターや自転車など2輪車での配達が中心だが、競合他社との配達員の奪い合いなどもあり人手不足が課題になりつつある。

 人手不足の解消策として美団が期待を寄せたのが、Valeoの自律配送車だった。eDeliver4Uの車両寸法は全長2800×全幅1200×全高1700mmで、1回の配送で最大17食を運搬できる。

 車両には4個のLIDAR(レーザーレーダー)と3個のカメラ、2個のミリ波レーダー、6個の超音波センサーを搭載し、自動運転できるようにした。電圧48Vのリチウムイオン電池や出力15kWのモーターなどで駆動する電気自動車(EV)で、1回の充電で最大約100km走行できる。自動運転中の最高速度は12km/hである(図2)。

図2 eDeliver4Uに搭載する駆動用モーター
図2 eDeliver4Uに搭載する駆動用モーター
ヴァレオの48Vシステム向けモーターで、出力は15kW。(撮影:日経Automotive)
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 利用の流れはこうだ。まず、利用者は美団のスマートフォンアプリで料理を注文する。注文を受けた店舗は料理を用意し、eDeliver4Uは店舗に向かう。料理はeDeliver4Uの車体側面のロッカーに入れ、鍵をかける。料理を積んだ車両は利用者が指定した場所に自動運転で向かい、到着すると利用者のスマホにメッセージを送る。到着の連絡を受けた利用者は車体側面のカメラ部にQRコードをかざしてロッカーを解錠、料理を取り出す(図3、4)。

図3 スマホでロッカーを解錠
図3 スマホでロッカーを解錠
料理を注文した時に発行されるQRコードを車体側面のカメラ部にかざす。デモは、20年1月に米ラスベガスで開催された展示会「CES 2020」で披露したもの。(撮影:日経Automotive)
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図4 解錠後、料理を取り出す
図4 解錠後、料理を取り出す
写真左下のロッカーが開いた。(撮影:日経Automotive)
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 つまり、人と人が接触することなく出前の料理を受け渡しできる。決済もスマホで完結するため、現金やクレジットカードの受け渡しは発生しない。武内氏によると「既に中国・北京で実証実験用のナンバープレートを取得済み」で、市街地での検証を進めていくという。

 安心感というキーワードで、非接触と並んで市場ニーズが高まっている技術は他にもある。