全2927文字

 「新技術の導入や環境対応で最低限後れを取らないようにする」――。2020年11月6日、いすゞ自動車のオンライン決算説明会(21年3月期第2四半期)に臨んだ片山正則社長は、前月末に締結したスウェーデンVolvo(ボルボ)グループとの提携の狙いをこう強調した。

 新型コロナウイルス感染症に収束の見込みはなく、いすゞの足元の業績は厳しい(図1)。さらに、電動化や自動運転化など取り組むべき課題の多さも追い打ちをかける。20年以上の長期を見据えたこの提携。難局を乗り切り、次の成長に向けた原動力にできるか。両社がともに歩み出す。

図1 いすゞ自動車のエンブレム
図1 いすゞ自動車のエンブレム
(撮影:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 片山社長は「後れを取らない」という守りの姿勢を見せながらも、「それぞれの得意分野でリードする気概をもってやっていく」と語気を強めた。いすゞは小型・中型トラックを得意とする。日本や東南アジア諸国連合(ASEAN)を主戦場として、年25万台を販売する。一方、Volvoグループは大型トラックが主力であり、欧州や北米を中心に年20万台を販売する。いすゞとは車格や市場がかぶらず、弱点を補う関係といえそうだ。

 技術開発の協力、プラットフォーム(車台)の共通化、部品の共同調達などで提携のシナジー効果を狙う。共同オフィスを日本とスウェーデンに設置して、新体制は21年上期に始動する。20年以上の長期間にわたる協力関係を築く。

 両社は提携の下準備を始めるべく、19年12月に提携の覚書を締結。20年10月に正式な提携契約を結んだ。この10カ月の準備期間について、片山社長は「話し合いを重ねたが、想定以上に相性が良いパートナーになると確信した」と自信を見せる。日本とスウェーデンは約8000km離れた遠い異国だ。あらゆる面で企業文化も異なるはず。そんな両社間において、片山社長は大きく2つの相性の良さを見いだした。

設計思想で共通点

 第1の相性の良さは、車両の設計思想が近いこと。ボディーやフレームの基本的な構造をはじめ、エンジンや変速機などユニットの組み合わせ方で共通点が多いという。提携によって、両社が取り組む「モジュール設計」(複合部品による組み合わせ設計)をより効率化できる。設計思想が近いと部品やプラットフォームの共通化を進めやすい。設計時の工数を減らしたり、集中調達でコストを抑えたりと早い段階で効果が見えてくるだろう。

 また、いすゞは同提携でVolvoグループ傘下のUDトラックス(旧日産ディーゼル工業)事業を2430億円で取得する。22年以降、日本やアジア向けの大型トラックの一部を両社で共有する。そして、Volvoグループの技術を活用しながら、大型トラック用新プラットフォームの共同開発に着手する。

 電動化や自動運転化など次世代技術の開発でも協力する。電動化については、いすゞが小型トラック「エルフ」をベースにした電気自動車(EV)モデルの開発を進め、「2022~2023年に向けて市場投入できるようトライ(試作・試験)している」(いすゞ)。仕様は検討中だが、航続距離は100k~200kmになる可能性が高い。都市内での配送を想定する。

 一方のVolvoグループは、欧州でEVトラックを投入する。20年11月5日(欧州現地時間)の発表によれば、大型EVトラック「Volvo FH」「Volvo FM」「Volvo FMX」の試験中である(図2)。航続距離は最大300kmになる見通し。21年に販売を始め、22年に量産を開始する。

図2 Volvoグループは大型EVトラックを22年に量産する
図2 Volvoグループは大型EVトラックを22年に量産する
(出所:Volvoグループ)
[画像のクリックで拡大表示]

 現段階では、Volvoグループの大型EVトラックをいすゞブランドで販売する計画はない。ただ、大型EVトラックの需要が日本でも高まれば、Volvoの大型EV技術を活用して日本市場に投入する可能性はあるという。両社が手掛ける車両の基本構造やユニットの配置などが近いなら、それだけ技術転用時の工数を減らしやすい。