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 異なるブロックチェーンを組み合わせて使う際の「相互運用性」を確保する日本発のミドルウエアが登場した。類を見ない技術で、異種チェーンをまたいだトランザクションを自動実行できる点が特徴だ。開発したのはブロックチェーン技術ベンチャーのDatachain(東京・港)。2021年初めにも実証実験を始める。

OSSとして世界に公開、2相コミットも実現可能に

 貿易や保険など様々な商取引にブロックチェーンが実装されつつある。活用の広まりに併せてネックになり得ると懸念されているのが相互運用性の問題だ。分野や事業者、システムごとに異なるブロックチェーンが乱立し、それらを接続するためにシステムを改修したり第三者が仲介したりする手間がかかる恐れがある。

 これに対しDatachainは異種ブロックチェーンの接続・運用を支援するミドルウエア「Cross Framework」を開発した。チェーン間の通信機能や各チェーンにおけるトランザクションの整合性確保、各チェーンのトランザクションを自動実行する「スマートコントラクト」の管理機能などを備える。

 2020年10月に特許を出願して情報を一般公開した。これに先立ち2020年2月にはオープンソースソフトウエア(OSS)として公開している。世界的にも珍しいミドルウエアでもありOSSにしたことで日本にとどまらない活用が見込めそうだ。

 Cross Frameworkを使うと、ある1つのブロックチェーンから他の複数のブロックチェーン上で実行するスマートコントラクトを、それぞれ整合性を保ちながら実行できるようになる。あるチェーンでスマートコントラクトによって処理を自動実行した後、他のチェーンのスマートコントラクトを呼び出して後続の処理をさせるといったアプリケーションを開発できる。

「Cross Framework」の特徴
「Cross Framework」の特徴
(出所:Datachain、以下同)
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 例えば異なるチェーンXとYとの間で銀行口座の残高を移す場合は次のようになる。まずXに移したい分だけYの残高を減らしてYの口座をロックする。次にYで減らした分だけXの残高を増やす。最後にXの残高変更が完了したのをYでも確認した後、Yの口座のロックを解除する。つまり勘定系システムなどで使う「トランザクション処理モニター(TPモニター)」と同様な2相コミットを、複数のブロックチェーン間で実行できるようになるわけだ。

 「様々なバリューチェーンをまたいだビジネスプロセスを、記録を残しながらつなぐのがブロックチェーンの価値。これを発揮するうえで、相互運用性の確保は避けて通れない問題」。Datachainの鳥海晋シニアマネージャーは開発の狙いをこう説明する。

 相互運用性を欠いたままでいると、「ブロックチェーンを使うシステムがサイロ化する恐れがある」(鳥海シニアマネージャー)。保険金の請求や支払いを自動化するシステムを例に取ると、保険会社や医療機関、自治体、銀行と、複数の業種業界が関連し、違う種類のブロックチェーンが使われる可能性が高い。

 ほかにも法規制や国・地域などの違いに応じて、異種チェーンが混在する公算が大きい。相互運用性はブロックチェーンのさらなる広がりに欠かせないピースと言える。

ブロックチェーンの相互運用性の問題点
ブロックチェーンの相互運用性の問題点
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