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 住友ゴム工業が「自動運転時代」に向けて技術を蓄積している。特定の環境・条件下で完全自動運転する「レベル4」に対応したタイヤの遠隔監視システムを開発し、実証実験の段階に踏み込んだ(図1、2)。次世代交通サービス「MaaS(マース)」用車両への適用を念頭に置く。運転者がいない自動運転バスなどで、タイヤのトラブルを即座に検知。修理担当者を急行させて、車両の稼働停止時間を最短に抑える仕組み。タイヤの売り切りにとどめず、サービスと組み合わせて付加価値を高める。

図1 住友ゴム工業の自動運転「レベル4」対応のタイヤ遠隔監視システム
図1 住友ゴム工業の自動運転「レベル4」対応のタイヤ遠隔監視システム
(出所:住友ゴム工業)
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図2 実証実験時のタイヤトラブルへの対応作業
図2 実証実験時のタイヤトラブルへの対応作業
(出所:住友ゴム工業)
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 2020年11月11日からの2日間。岐阜市の市街地、金華橋通り(きんかばしどおり)一帯で開催の交通イベントに合わせて、1台の自動運転バスが緩やかに走った――。

 「自動運転実証実験」のラベルをフロント部に掲げたこの車両。手掛けたのは、群馬大学の次世代モビリティ社会実装研究センターだ。住友ゴムとは共同研究者という関係にある。レベル4を視野に入れた実証実験であるが、安全性を考慮して運転者が着座する「レベル2」相当の状態で走らせた。

 タイヤの状態を把握するため、各タイヤに搭載したTPMS(Tire Pressure Monitoring System、タイヤ空気圧監視システム)で内部の空気圧を常時計測する。集めたデータは管制所に送られる。空気圧が基準値から外れると、故障が近い、もしくは故障した状態と判断。管制所からタイヤ整備店に自動で連絡が入り、整備店は修理担当者を現場に急行させタイヤ交換などの処置を施す(図3)。

図3 遠隔監視システムを使った実証実験の概要
図3 遠隔監視システムを使った実証実験の概要
(出所:住友ゴム工業)
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 遠隔監視システムと車両は連係しており、車両の走行状態や位置情報も分かる。空気圧に異常が見られた場合、車両は自動停止して安全を確保する。同実証実験では、タイヤトラブル時の対応方法を確かめるために、市街地での運行途中に模擬的なパンクを発生させた。遠隔監視システムが正常に起動するか確認しつつ、課題の洗い出しを進めていった。

無人運転が弱点に

 実証実験を通して見えてきたのは、無人運転で走行できるレベル4特有の課題だ。例えば、車両の停止時。無人運転の場合は、タイヤの修理や交換に必要なサイドブレーキの操作ができない。遠隔システムと車両の制御機能を連係させたり、修理担当者が車両に乗り込んで操作したりする方法を想定するが、いずれも安全面の担保が難しい。

 運用面の課題もある。「修理担当者はタイヤ以外に自動運転車系の多様な知識が必要となる」(住友ゴムの技術者)ことだ。専用開発したタブレット端末用アプリの使い勝手を高めることで、修理担当者の負担を減らしていく。