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 英国がディーゼル車とガソリン車の新車販売禁止を2030年に前倒し――。20年11月、自動車関係者にとって衝撃的なニュースが流れた。日本貿易振興機構(ジェトロ)のビジネス短信によれば、同国は、炭素排出ゼロで長距離走行可能なハイブリッド車(HEV)の販売は35年まで認めるとしている。

 背景にあるのは、同国が掲げる「50年までに温暖化ガス(GHG)の純排出ゼロにする」という目標だ。純排出ゼロとは、人間の活動によるGHGの排出量を森林などで吸収されるレベルに抑えること。同国はその目標の達成に向け、「グリーン産業革命」と呼ぶ政策を発表。電気自動車(EV)、洋上風力、水素、原子力などを含む10項目に対して総額120億ポンド(1ポンド=138円換算で1兆6560億円)を投じる。ディーゼル車とガソリン車の新車販売禁止の前倒しは、この10項目のうちのEVに関する計画の中に組み込まれた。

 脱エンジン車に向けて動いているのは、英国だけではない。米カリフォルニア州は、州知事が20年9月に35年までにZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)以外の新車販売を禁止する行政命令を発表した。フランスも、40年までにエンジン車の新車販売を禁止すると発表している。日本経済新聞の報道によれば、カナダのケベック州も35年までにガソリン車の新車販売を禁止すると発表している。

 このようにエンジンへの風当たりが強くなる中、エンジンの開発をストップさせてはならないと警鐘を鳴らすのが、大手エンジニアリング・サービス・プロバイダー(ESP)の1つであるドイツIAVのMarc Sens氏だ。同氏は、35年に向けて自動車が排出する二酸化炭素(CO2)相当量(温暖化係数に基づきGHGの排出量をCO2の排出量に換算した値)を減らしていくには、高効率なエンジンが不可欠と断言する(図1)。EVの普及だけでは、排出するCO2相当量の低減効果に限界があるためだ。

図1 火花点火制御圧縮着火(SPCCI)と呼ぶ独自の燃焼方式によって高効率化を追求したマツダのガソリンエンジン「SKYACTIV-X」
図1 火花点火制御圧縮着火(SPCCI)と呼ぶ独自の燃焼方式によって高効率化を追求したマツダのガソリンエンジン「SKYACTIV-X」
(撮影:日経クロステック)
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 その根拠とするのが、自動車から排出されるCO2相当量に関する、同社で実施した解析の結果だ。20年から35年にかけて欧州で新車として販売される自動車のパワートレーン構成比がどう推移するかは、さまざまな企業や研究機関、団体が予測(シナリオ)を発表している。それらのシナリオのうちのいくつかに対し、同社はライフサイクルアセスメント(LCA)の視点から解析を実施した。

 同解析では、パワートレーンの内訳は、ディーゼル車をベースとした簡易HEV(MHEV)、ガソリン車をベースとしたMHEV、CNG(圧縮天然ガス)車、HEV、プラグインハイブリッド車(PHEV)、EV、燃料電池車(FCV)のような水素自動車としている。解析においては、自動車から排出されるCO2相当量として、車両生産/燃料生産/発電時に排出されるものも加味している。