2020年10月13日に米Facebook(フェイスブック)がスタンドアローン(単体動作)型VR(Virtual Reality)用ヘッドマウントディスプレー(HMD)「Oculus Quest 2」(以下、Quest 2)を発売した。19年5月に販売を始めた前機種「Oculus Quest」(以下、Quest)に比べて、大幅に性能を向上させた。
にもかかわらず、Quest 2の価格は、最も安いモデルで3万7100円(税込み)と、Questの4万9800円(税込み)よりも販売価格が1万円以上安い。さらに、同等な性能を備えるスマートフォンと比べても、格安に見える。一体、どうすればそこまで安くなるのか。分解して調べてみた。
スマホ並みの性能で半額以下を実現
これまで市場投入されているスタンドアローン型VR用HMDの中身は、ほぼスマートフォンのそれだ。例えばアプリケーションプロセッサーなどはスマートフォン向けのチップセットが使用され、ディスプレーやWi-FiやBluetoothの通信モジュール、2次電池なども搭載している。
Quest 2の仕様を見ると、ハイエンドスマートフォンに匹敵する。例えばアプリケーションプロセッサーには、米Qualcomm(クアルコム)の最新SoC(System on Chip)である「Snapdragon 865」を搭載。メモリー容量(RAM)は6Gバイトで、内蔵ストレージ容量も64Gバイトまたは256Gバイトと、ミドルレンジ(中位機種)かそれ以上の性能を持つ。
もちろん、スマートフォンにあるLTEや5G(第5世代移動通信システム)用の通信モジュールや、画素数の大きなカメラなど、Quest 2に搭載していない部品もある。一方で、Quest 2には付属コントローラーや光学部品を搭載するなど、スマートフォンにはない別のコスト要因がある。
そんなQuest 2の価格は、64Gバイト版が3万7100円(税込み、米国では299米ドル)、256Gバイト版が4万9200円(税込み、同399米ドル)である。Quest 2と同等の仕様を備えるハイエンドスマートフォンの価格は、10万円前後。この価格差だけ見ると、FacebookはQuest 2をハイエンドスマートフォンの半分以下の価格で提供していることになる。競合他社のVR用HMDの製品と比べても半値に近い価格設定となっている。
必要部品をそろえたシンプルなメイン基板
では安さに何か工夫はあるのか。まず、搭載するメイン基板を観察すると、Questでは長靴のような特殊な形だったが、Quest 2では至ってシンプルな長方形となった。取れ高の面から考えれば、QuestよりもQuest 2はコスト低減できていると言えそうだ。
メイン基板の表面中央には、アプリケーションプロセッサーSnapdragon 865を備える。その上には韓国Samsung 製DRAMをPoP(Package on Package)実装しており、スマートフォンなどでもよく見る一般的な構造だ。
同じ面に米SanDisk(サンディスク)製の64Gバイトのフラッシュメモリーや、Qualcomm製のWi-Fi/Bluetooth用通信チップを搭載する。メイン基板の裏面にはQualcomm製の電源管理ICを実装していた。
“2階建て”構造が増えてきた近年のスマートフォンのメイン基板と比べると1階建てのシンプルな構造ではあるが、大きくコストを減らせる要素とは言えないだろう。
では電池はどうか。Quest 2に搭載したLiイオン2次電池の組み立てメーカーは、「iPhone」などでも多く採用されている中国・欣旺達電子(Sunwoda Electronics)だった。電池容量は3640mAhと、Questとほぼ同じである。一般的なスマートフォンと比べても容量的には同等で、これも安くなる要素ではなさそうだ。