全3413文字
PR

 米UnitedSiCは、SiC(シリコンカーバイド、炭化ケイ素)を利用したパワー半導体素子(以下、パワー素子)の新製品を発表した。SiCパワー素子は、Siパワー素子に比べて電力損失が小さい、高速なスイッチングが可能などの特性を備える。同社製品も同様だ。その上で、「逆張り」の戦略で競合と差異化を図った。

 差異化ポイントは大きく2点ある。これらいずれもSiC業界における主流とは異なる。1つは、「接合型FET(JFET:junction FET)」と呼ばれるトランジスタを採用したこと。SiCトランジスタの主流は現在MOSFETである。もう1つは、耐圧が750Vであること。SiC MOSFET製品では、耐圧600~650Vと耐圧1200Vが多い。耐圧900V品も増えつつあるが、750V品は珍しい。加えて、Siパワー素子並みの価格に抑えることで、普及を目指す。狙うのは、主に車載やITインフラ(データセンターなど)、再生可能エネルギーの市場だ。いずれもSiCパワー素子の特徴を生かしやすい分野である。

新製品の概要
新製品の概要
(出所:UnitedSiC)
[画像のクリックで拡大表示]

低損失でSJ型Si MOSFET並みの価格に

 UnitedSiCはもともと、米ラトガーズ大学の研究者らが1999年に立ち上げた企業だ。一貫してSiC JFETを手掛けてきた。本格的に製品を展開し始めたのは、創業からおよそ15年経過した2014年である。

UnitedSiCの概要
UnitedSiCの概要
(出所:UnitedSiC)
[画像のクリックで拡大表示]

 SiC JFETは、SiC MOSFETに比べて大きく2つの利点を備える。1つは、特性面で優れる点があること。具体的には、オン抵抗が小さく導通損失を低減しやすい、MOSFETのような酸化膜がないので酸化膜に起因する信頼性の問題がない、といった点である。もう1つは、MOSFETに比べて、製造プロセスが比較的単純とされること。その分、低コスト化につながる。

 実際UnitedSiCは、今回の新製品でこの2点を訴求している。例えばオン抵抗が小さいので、競合の耐圧650VのSiC MOSFETに比べて、導通損失を大幅に低減できるという。同じダイサイズで比べた場合、25℃で65~75%分、125℃で45~70%分、導通損失が小さいとする。新製品は60A品と21A品の大きく2品種があり、前者のオン抵抗は25℃時で18mΩ、125℃時で31mΩである。加えて、競合の耐圧650VのSiC MOSFETに比べてスイッチング性能が高いと訴求する。

新製品の主な仕様
新製品の主な仕様
(出所:UnitedSiC)
[画像のクリックで拡大表示]
ハードスイッチングの性能
ハードスイッチングの性能
(出所:UnitedSiC)
[画像のクリックで拡大表示]
ソフトスイッチングの性能
ソフトスイッチングの性能
(出所:UnitedSiC)
[画像のクリックで拡大表示]

 コスト競争力もアピールする。UnitedSiC President and CEOのChristopher Dries氏によれば、今回の新製品は「Super Junction(SJ)構造のSi MOSFETのプレミアム品とほぼ同水準の価格」(同氏)とする。口径150mm(6インチ)のSiCウエハーで作成している。製造をドイツX-FABに委託し、米テキサス州にある工場で製造している。同工場は車載対応であり、今回の新製品も車載向けのディスクリート(個別)半導体や受動部品のための各種信頼性試験の規格である「AEC-Q101」の認定を受けている。

SJ構造のSi MOSFETに対するコスト競争力をアピール
SJ構造のSi MOSFETに対するコスト競争力をアピール
(出所:UnitedSiC)
[画像のクリックで拡大表示]