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 コロナ禍を受けて多くの企業がオフィス再編に取り組んでいる。在宅勤務を正式に認める一方で、オフィスにフリーアドレス制を導入して床面積を減らし、コミュニケーションやコラボレーションのためのスペースを設けるなどしている。

 ただこうしたオフィス再編の「一般解」を安易に導入しても、効果は十分に得られないかもしれない。企業価値や社員のエンゲージメント(積極的な関与)の向上といった課題に相対しながら、各企業に合った解を導き出すべきだ。その参考になりそうなオフィス移転事例を紹介する。

オフィスへの出社は社員の「権利」

 クラウド人材管理システムを手掛けるカオナビは東京メトロの虎ノ門駅に直結する「東京虎ノ門グローバルスクエア」(東京・港)の15階と16階に本社オフィスを移転し、2020年11月24日から営業を始めた。

新本社オフィスの無人レセプション。背後のテーブルにはハイチェアーが並び、交流の「ハブ」とする。また、来場者がカウンター内で「kaonavi」のサインを入れて記念撮影できる体験ゾーンになっている
新本社オフィスの無人レセプション。背後のテーブルにはハイチェアーが並び、交流の「ハブ」とする。また、来場者がカウンター内で「kaonavi」のサインを入れて記念撮影できる体験ゾーンになっている
(出所:カオナビ、以下同)
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 同社はオフィス移転に当たり、ニューノーマル時代においてオフィスへの出社は社員の「義務」でなく「権利」であると定義。社員に自分の居場所であると感じてもらえるような居心地の良いオフィスづくりを目指した。同社は社員と企業が対等な関係を構築する「相互選択関係」を指向しており、新本社オフィスはそのコンセプトを体現する場となる。

 オフィス移転のプロジェクトリーダーとなったのは、同社の玉木穣太(じょうた)CDO(最高デザイン責任者)である。2019年3月のマザーズ上場を経て、経営や事業に「デザイン」の思想を組み込むことを狙ったカオナビは、同社の社外コンサルタントだった玉木氏に2020年3月からオフィス移転のプロジェクトリーダーを委ね、同年7月からCDOを任せた。以来、玉木氏はXCOG(エックスコグ)という自らの会社のCEO(最高経営責任者)を務めながら、カオナビの契約社員として週3日程度、勤務する。

 東京・港の「AKASAKA K-TOWER」の5階にあった移転前の本社オフィスについて玉木CDOは次のように振り返る。「1人で黙々と作業をする場になっていて、コミュニケーションを取りにくかった」。コロナ禍以前は原則全社員が同オフィスに出社することを想定し、約392坪の床面積に250の座席を設けていた。

 これに対して新本社オフィスは約816坪(408坪×2フロア)と約2倍の床面積を確保し、370の座席を用意した。増床の理由としては社員数の増加が見込まれていることもあるが、社員の執務フロアと社外の顧客を招くフロアを分ける意図が大きい。

 「オフサイトで(職場から離れて)コミュニケーションできる場」(玉木CDO)とする目的で、15階を顧客企業や取引先、株主、カオナビ出身者など同社関係者が交流するためのコミュニティースペースとした。新オフィスでは50%の出社率を想定しているが、コロナ禍により当面は20~30%程度となる見通しだ。