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 読者の皆さんは「人工衛星データ」と聞いたとき、何を思い浮かべるだろうか。多くの人は「最先端」「いろんな事ができそう」というイメージを持ちつつも、「自分では利用できない」「敷居が高い」「専門家だけのもの」という感想を持つことだろう。メディアなどで人工衛星データの活用事例などを見かけることはあっても、自分自身で利用してみようという気にはならないかもしれない。

 実は、そんなイメージに反して、現在では誰もが手元のパソコンで人工衛星データを簡単に利用できるようになっている。その原動力は、各種衛星データのオープン化と、衛星データ利用ツールの登場である。

 例えば日本では、「Tellus(テルース)」というツールが経済産業省の「政府衛星データのオープン&フリー化及びデータ利活用環境整備・データ利用促進事業」の取り組みとして2019年より提供されている。また米Google(グーグル)はバーチャル地球儀システム「Google Earth」などとは別に、「Google Earth Engine」というツールを10年から提供している。これらのツールを使えば、例えば新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の経済への地球規模の影響などを、人工衛星データを利用して簡単に確認することができる。

 具体的なデータとしては、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が提供している「GSMaP」と呼ばれる地球上の降雨量データや、米国のコロラド鉱山大学(Colorado School of Mines)が提供している夜間光のデータなど多岐にわたっている。

JAXAのGSMaPによる沖縄近辺の降雨の様子
JAXAのGSMaPによる沖縄近辺の降雨の様子
(図:Google Earth Engine/JAXA Earth Observation Research Center)
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米コロラド鉱山大学による関東地方の夜間光の様子
米コロラド鉱山大学による関東地方の夜間光の様子
(図:Google Earth Engine/Earth Observation Group, Payne Institute for Public Policy, Colorado School of Mines)
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教育機関に利用広がる衛星データツール

 衛星データ分析ツールが充実してきたことによって、最近では大学教育にも取り入れられている。例えば慶応義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科と理工学研究科では、19年からGoogle Earth Engineを活用した授業を行っている。

 多くの学生はGoogle Earth Engineを利用した経験が無いにもかかわらず、授業を通じて最終的には新型コロナの世界各国への影響を可視化したり、アフリカにある鉱山を機械学習で特定したり、といった多様なテーマについて、実際に手を動かして分析できるようになる。

 筆者が所属する神武研究室では、このような大学教育でのノウハウを生かし、今後は高校での教育にも衛星データの利用を展開する取り組みも始めている。既に高校生がGoogle Earth Engineを使った研究成果を学会で発表している例もあるが、まだまだ一部の学生にとどまっている。その裾野を広げ、より多くの学生に衛星データ活用について関心を持ってもらうのが狙いである。