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 「農林水産省のチームがみんなデジタル庁へ行って全政府でやってしまったらいいのではないか」。2020年10月に開催した政府の規制改革推進会議のデジタルガバメントワーキング・グループで、河野太郎規制改革担当相はこう述べた。農水省が進めるデジタル変革が異彩を放っているからだ。

 農水省は2022年度までに約3000件の全行政手続きをオンライン化する計画だ。全手続きのオンライン化を掲げて大幅な業務の見直しを始めた府省庁はほかに見当たらない。職員が政策立案の段階から「デジタル技術を使って何ができるか」を検討できるような体制づくりも始めたという。

 農水省が行政手続きのオンライン化のために整備を進めているのは「農林水産省共通申請サービス(eMAFF)」。農水省が2018度から検討を始め、国だけでなく自治体で完結する手続きも含む共同基盤として2019年度から開発中だ。基幹部分は既に完成しており、2020年4月から一部手続きのオンライン申請を受け付け始めた。2021年度から本格稼働して2025年度にはオンライン利用率60%を目指すという。

農林水産省共通申請サービス(eMAFF)の画面例
農林水産省共通申請サービス(eMAFF)の画面例
(出所:農林水産省の資料を基に日経クロステック作成、画面例は研修用の架空の制度である)
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 現状では農業経営者が農地を売買したり経営支援の交付金を受け取ったりする行政手続きのために膨大な事務作業と申請書類を用意する必要がある。ある交付金の申請手続きでは申請者1人が厚さ約50センチもの添付書類を提出する必要があったという。

 eMAFFでは農業経営者や農業団体などの申請者が経済産業省の法人共通認証基盤であるgBizID(GビズID)を利用する。統一感のあるインターフェースを実装してスマートフォンやパソコンなどで高齢者でも使いやすく直感的に申請できるようにする。

 農水省は2020年5月に農業従事者向けコミュニケーションツールとなる無料スマホアプリ「MAFFアプリ」を公開した。登録ユーザーは地域や農作物などに応じて災害対策情報や補助事業の説明会などの情報を受け取れる。農水省は現場の要望や統計データを直接受信して迅速に政策対応に反映できるという。ユーザーの要望を踏まえてMAFFアプリのアップデートを続けており、将来はeMAFFなどとの連携も想定している。