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2000サイクルの充放電が可能な新開発の水系LIB
2000サイクルの充放電が可能な新開発の水系LIB
充放電試験セルの外観写真。高いサイクル特性と低温耐久性を確認した。(写真:東芝)
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 リチウムイオン2次電池(LIB)の一種であり、安全性が非常に高いとされている「水系LIB」が、実用化に向けて大きく前進した。東芝は2020年11月、試作した水系LIBの性能を公開し、従来の課題だったサイクル寿命が大きく伸びて、2000回以上充放電できることを示した。低温耐久性も良好で、-30℃の環境下でも動作する。

 高いサイクル特性と低温耐久性を両立させる水系LIBの開発は「世界初」(同社)。現時点では4cm角の小型セルの段階だが、2020年代中盤までに、高容量セルのサンプル出荷を目指す。

蓄電システムの簡易化が可能

 今回の水系LIBは、定置用蓄電池の低コスト化を可能とするものである。電解液に可燃物を含まない水系LIBは、安全性に優れており、消防法が定める「危険物」に該当しない。蓄電設備を住居の近くやオフィスビル内に設置したり、安全装置を簡略化したりすることができる。そのため、従来の電池に比べて大幅なコスト削減につながる。

 現在普及しているLIBは、電解液に可燃性有機溶媒を使用するので、同法の危険物に該当する。蓄電施設を設置する際、周囲の建物との距離を保つために、空き地を確保しなくてはならなかった。その上、防火設備も用意する必要があり、安全対策によって蓄電システム全体のコストがかさんでしまっていた。

SCiBの信頼性をさらに高めた

 同社の水系LIBは、2007年に発表した安全性の高いLIB「SCiB」の進化系という位置付けだ(表1)。SCiBは、負極材料として、従来のグラファイトやLi金属ではなく、チタン酸リチウム(LTO)を採用し、熱的な安定性を向上させた。Li金属を使った場合だと、負極表面にデンドライトと呼ばれるLi析出物が生成し、セルが短絡(ショート)してしまう恐れがあった。LTOを使用することで発火リスクは抑制されたが、外部の火が電解液に引火するリスクは依然として残り、さらなる改善が課題だった。そこで、SCiBからもう一歩進んで、有機電解液を不燃性の水溶液に置き換えたのが今回の水系LIBである。

表1 水系LIBは燃焼リスクが非常に小さい
材料が異なる各LIBを安全性の観点から比較した。今回東芝が開発した水系LIBは、同社「SCiB」をより安全化するために不燃性の水溶液を電解液として使った。有機電解液を用いる一般的なLIBに対して電圧は低い。(表:日経クロステックが作成)
表1 水系LIBは燃焼リスクが非常に小さい
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