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 プリント回路基板(PCB)を手掛けるOKIサーキットテクノロジー(山形県鶴岡市)は2020年度から本格的に開始した工場自動化プロジェクト。既に紹介したアナログ製造装置のレトロフィットIoT(Internet of Things)だけでなく、さまざまな取り組みを同時並行的に進めている。顧客から受け取った受注情報処理の自動化もその1つだ。これに加え、AI(人工知能)技術を使った検査工程の効率化、ロボットによる搬送の自動化などさまざまな自動化に着手しており、3年計画で1日当たり480時間(1日8時間として60人日)の工数削減目標のうち、20年12月までに30時間の省人化を実現した。

CAD/CAM入力自動化に顧客を巻き込む

 同社が得意とする10層以上の多層基板はここ数年需要が増えており、自動化プロジェクトは人手不足の中で増産対応を可能にするのが大きな狙いだ。個別のプロジェクトでは削減できる工数が多いものを優先して実施している。

 そこでターゲットになったのは受注情報を基にCAD/CAMへ入力する作業である。顧客からの受注案件を受けて製造データをつくるCAD/CAMの担当部署は、約60人の大所帯だ。担当者は顧客が伝えてくる要件を読み取り、技術基準や治工具基準なども勘案して要望に応じられるよう判断しながら工程を設計し、製造条件などを決めてCAD/CAMへ入力していく。そうしてできた製造データを製造現場に渡す。顧客によって要件の基準や記述方法が異なっているせいもあって、この作業は「非常に大変」(代表取締役社長の西村浩氏)である。

 そこを自動化する。具体的には「最低限の要件から自動的に判定して入力データを作成する」(同社技術本部自動化推進プロジェクトチームの佐藤和昭氏)プログラムの独自開発を試みている(図1)。プログラムはまだ開発途中であり、全自動ではなく「今は20%ぐらい自動化できたところで、今後は50%ぐらいにはしようと思っている」(西村氏)。

図1 自動判定プログラムによる製造工程設計の自動化
図1 自動判定プログラムによる製造工程設計の自動化
データ項目を整理し、ここに最小限の情報を入力すれば製造条件を自動的に判定できるようにする。(出所:OKIサーキットテクノロジー)
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 このプロジェクトのゴールは入力作業の自動化とそれによる工数削減だけではない。西村氏の構想はもっと壮大だ。自動化率の向上を発注改革につなげ、顧客を巻き込んだデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を狙う。具体的にはOKIサーキットテクノロジーに合わせたフォーマットで顧客が発注データを出せるようにする。「営業部隊には、うちのフォーマットに合わせてくれれば全部自動で作業が進むから、お客様にも(品質、コスト、納期の)メリットがありますよ、と顧客に提案するように言っている」(同氏)。実際にはまだ強くは言えていない様子というが「私の目標として変えていくべきだと思っている」(同氏)。

 その背景には、PCB業界の変化がある。西村氏によると、以前は日本国内に多数あったPCBメーカーが「もう商売にならないと廃業して数が減っている」。量産品のPCBメーカーは日系も含めて中国に移っており、「当社が手掛けるような製造枚数が2枚とか3枚の基板も、もし当社が造らないと言ったら、あと数社しか選択肢が残らない」(同氏)。今までであれば、データフォーマットをPCBメーカー側に合わせてほしいと、顧客に言っても取り合ってもらえず、仕事が競合の会社に行ってしまうだけだった。

 PCBメーカーの数が減った結果、今後は意見が通りやすくなると同氏は読む。「(今まではPCBメーカーが顧客であるセットメーカーに合わせていたが)そろそろ逆の取り組みをしていった方がお互いのためと言い出そうと思う。自動化プロジェクトのCAD/CAM入力作業の自動化はその一環の話」(同氏)と位置付けている。