全国460自治体で2020年11月27日、LGWAN(総合行政ネットワーク)を使ったテレワークがスタートした。遅まきながら自治体職員はLGWANの接続を前提とした各種業務を自宅から行えるようになった。取り組みは地方公共団体情報システム機構(J-LIS)による実証実験との位置付けだが、実質的にテレワークが始まったとみていい。利用料は2022年3月末まで無料という。
460自治体が使うテレワークシステムは「自治体テレワークシステム for LGWAN」である。情報処理推進機構(IPA)とNTT東日本が共同開発したテレワーク向けのシンクライアント型VPN(仮想私設網)ソフト「シン・テレワークシステム」を改良したものだ。シン・テレワークシステムは、かつてIPAが「スーパークリエータ/天才プログラマー」と認定し、2020年4月からNTT東日本の特殊局員も務めるIPAの登大遊産業サイバーセキュリティセンターサイバー技術研究室室長が開発したことでも知られる。
想定を1.4倍上回る応募が殺到
LGWANに接続された庁舎内の業務用パソコンに自治体テレワークシステム for LGWANのソフトをインストールすると、パソコン画面を自宅パソコンからインターネット経由で操作できる。自宅に専用線を用意したり、自治体のファイアウオールの設定を変えたりする必要はない。
セキュリティーには十分配慮してある。例えば自治体職員の自宅パソコンでアンチウイルスソフトが動作しているかを自動的に確認したり、接続時にワンタイムパスワードで多要素認証したりする。パソコン画面をキャプチャーできないようにもしている。
自治体テレワークシステム for LGWANの稼働に際して、LGWANを管理する地方公共団体情報システム機構(J-LIS)が2020年10月に参加自治体の募集を開始すると、応募が殺到したという。予想を上回る460団体から計4万3000台分の応募があった。
J-LISは当初3万台の利用を予定していたが、急きょ、460団体が3万4000台分を利用できるようにした。応募総数や自治体規模に応じて、1自治体当たり1~2000台程度の配分に調整した。
種別 | 団体数 |
---|---|
道県 | 12 |
政令指定都市 | 7 |
特別区(23区) | 12 |
市 | 314 |
町村 | 110 |
一部事務組合・広域連合 | 5 |
課題は職員のITリテラシー
具体的な利用方法や目的は、自治体によってまちまちだ。ただ総務部門やIT部門などでテレワークをしたいとの申し込みが多かった。「まずは『お試し』で導入し、使い勝手を確かめながら使い道を探っていくのではないか」(J-LISの梅原忍総合行政ネットワーク全国センターシステム部部長)。
自治体からの評判は上々だ。三重県伊賀市は80台応募し、75台分割り振られた。企画振興部広聴情報課情報政策係の森大樹係長は、新型コロナの感染予防のため、複数のテレワークシステムを検討してきた。シン・テレワークシステムを使ってみると、「使い勝手がとても良かった。(庁舎内での利用と)ほぼ同じで違和感がない」(森係長)。