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 厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症向けワクチンの流通を支援・管理する新システムの開発に着手した。希望する国民が速やかにワクチン接種を受けられるよう流通の効率化をシステム面で支援する。

 開発する新システムは「V-SYS(ワクチン接種円滑化システム)」。2021年前半にも見込まれる「国民へのワクチン接種開始までに開発を完了し、運用を始める」(健康課予防接種室)計画だ。製薬会社や医薬卸業者から逐次供給されるワクチンの数量を基に、政府が各市区町村や医療機関への割り当て計画を立案したり、関係者がワクチンの供給状況を確認・共有したりするために用いる。

 政府が主体となった全国的なワクチンの流通事業は2009年の新型インフルエンザ流行時にもあった。想定より感染が拡大しなかったため問題にはならなかったが、当時、自治体や医療機関との情報共有は紙とファクスに頼っていた。V-SYSは全国民へのワクチン接種という大きな事業で、厚生行政におけるデジタル化の遅れを挽回できるかを占う試金石となる。

 厚労省や政府にとっては、もう1つの「汚名」を雪辱できるかが試される場にもなりそうだ。新型コロナの対策で露呈した「緊急時のIT活用力が弱い」という汚名である。

随意契約でも慎重にベンダーを評価し選定

 厚労省は2020年3月以降、新型コロナ対策として様々なシステムを急ぎ調達した。一般競争入札が難しい緊急時に認められる「緊急随意契約(緊急随契)」を多用したが、それがツケとなる形でトラブルが相次いだ。「丸投げした既存ベンダーに十分な開発体制がなかった」「意思決定の過程が不明確で適切なベンダーを選べていない」などが原因だ。

 V-SYSではこうした反省や批判を踏まえ、ベンダーの選定や体制の構築に慎重を期したという。緊急随契といえども複数ベンダーから提案を広く募るなど、丸投げからの脱却を図ったのだ。

厚生労働省がV-SYS(ワクチン接種円滑化システム)の一般競争入札で示した上流工程の調達要項
厚生労働省がV-SYS(ワクチン接種円滑化システム)の一般競争入札で示した上流工程の調達要項
(出所:厚生労働省)
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 厚労省は、V-SYSを2つの工程に分割してベンダーを選定した。システムの分析調査や全体の工程管理、開発ベンダー選定時の調達を支援する上流工程と、システム本体の開発・運用を担う後工程である。大規模なシステム開発で多い上流工程の支援ベンダーを使うことで、ベンダーの選定力やプロジェクト管理の質的向上を重視した。

 時間的な余裕があった上流工程の調達では一般競争入札を実施し、2020年8月に野村総合研究所(NRI)を選定した。一方、開発ベンダーは緊急随契で契約相手を選んだものの、2020年9月に複数ベンダーへ提案を呼びかけて「ほぼ一般競争入札と同様の選考プロセスを取った」(厚労省の予防接種室)という。

 具体的にはNRI支援の下で仕様書を作成し、ベンダーから募った提案を価格も含めた複数の項目で採点する「総合評価方式」に近い選考プロセスを取ったというのだ。評価の詳細は非公開だが、今回は最も点数が高かったというNECを開発ベンダーに選定した。

 ベンダーを選定した2020年秋では予測も難しかったワクチン供給に間に合わせるため、提案にはシステムを迅速に開発・運用できる体制を求めた。V-SYSは、NECから提案があった、採用実績が豊富だというあるベンダー(非公表)のPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)を採用して開発を進めている。NRIとの契約金額は1億9195万円。NECが担当する開発・運用工程を含めて、政府が2020年度第2次補正予算で確保した28億円が充てられる。