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 米連邦通信委員会(FCC)による5.9GHz帯の再編方針が、「つながる車」の転換点になりそうだ。トヨタ自動車や米General Motors(ゼネラルモーターズ、GM)などが長年推進してきた自動車専用通信の帯域幅を大幅に縮小する考えである(図1)。代わりに携帯電話の通信方式を基にした技術への移行を促す。トヨタら推進派は戦略の再考を迫られる。国内における周波数再編の議論につながる可能性もある。

図1 DSRCは終焉(しゅうえん)するのか
図1 DSRCは終焉(しゅうえん)するのか
GMが2015年に実施したDSRCを使った車車間通信の実験風景(出所:GM)
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 FCCは2020年11月、「DSRC(Dedicated Short Range Communications)」と呼ばれる自動車専用通信に割り当てていた帯域幅を縮小する方針を公表した。DSRCは、インターネットにつなぐ用途ではなく、主に自動車同士の直接通信(車車間通信)や道路側設備との通信(路車間通信)に使う方式の総称である。米国では、無線LAN規格を基に低遅延性を重視した「IEEE 802.11p」と、その関連規格がDSRCと呼ばれる。

 FCCは5.850G~5.925GHzの75MHz幅に割り当てていたDSRCの帯域のうち、5.850G~5.895GHzの45MHz幅をアンライセンス(無免許)帯として無線LANなどに使えるようにするとした(図2)。

図2 FCCによる5.9GHz帯の再編方針
図2 FCCによる5.9GHz帯の再編方針
自動車用途の「ITS」は半分以下に減らされる(出所:FCC)
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 残る5.895G~5.925GHzの30MHz幅のうち、20MHz幅については移動通信を自動車で使いやすくした規格「Cellular Vehicle-to-Everything(C-V2X)」に割り当て、残る10MHz幅をDSRC用として残すか、C-V2X用にするか検討するとした。DSRC用帯域は残ったとしてもわずか10MHz幅で「C-V2Xにくら替えするのが現実解ではないか」(自動車通信に関わる技術者)との見方が強まる。

 FCCがDSRCの帯域幅を縮小する理由として「一般消費者向け自動車市場に広がらなかった」ことを挙げる。周波数帯を用意してから20年たったにもかかわらず、DSRC搭載車両はほとんど普及しなかったというのだ。DSRC搭載車を量産したのは、GMやドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン)など少数のメーカーにとどまる。GMは17年にCadillac「CTS」に導入したものの、他車種への拡大はほとんど進んでいないとみられる。

 FCCの方針に対して、DSRC推進派は反発している。「(21年1月に)トランプ政権からバイデン政権に代わることで、電波政策の方針転換があり得る」(DSRCに関わる国内技術者)と考えて、DSRCの重要性を新政権に訴えていくようだ。