トヨタ自動車は、燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」を全面改良して、2020年12月9日に発売した。6年ぶりの全面改良になる。FCシステムを刷新し、1回の水素充填からの航続距離を先代車に比べて30%以上伸ばしたのが最大の特徴だ。同社の高度運転支援技術「Toyota Teammate」の1つである「自動駐車支援機能」を搭載するなど、予防安全性能も強化した(図1)。
同日に開いたオンライン発表会で、新型車の開発責任者でトヨタMid-size Vehicle Companyチーフエンジニアの田中義和氏は、「航続距離の延長は先代車からの最大のテーマだった。新型車の航続距離は約850km(WLTCモード)となり、先代車より30%向上した注1)。また、約3分で水素を充填できるため、使い勝手も良くなった」と述べた(図2)。
航続距離の延長に寄与した第1の要因は、高圧水素タンクの本数を、先代車の2本から3本に増やしたことである。これにより、同タンクの合計容量は先代車の122.4Lから141Lに増加した(有効水素搭載量は先代車の4.6kgから5.6kgに増加)。
新型車に搭載した3本の水素タンクのうち、1本はセンタートンネルに、残りの2本はリアアクスル(後部車軸)の前後に配置した。先代車はFF(前部エンジン前輪駆動)車向けの「新MCプラットフォーム」を改良して適用していたが注2)、新型車はトヨタの車両開発手法「TNGA(Toyota New Global Architecture)」に基づく最新プラットフォーム「GA-L」を採用した。FR(前部エンジン後輪駆動)車向けの同プラットフォームを使うことで、センタートンネルに水素タンクを搭載できるようになった(図3、4)。