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 半導体世界売上高で米Intel(インテル)と首位を争う韓国Samsung Electronics(サムスン電子)が、開発技術においてもその力を見せつけた。半導体のオリンピックと称される国際学会「ISSCC(International Solid-State Circuits Conference)」(ホームページ)の第68回大会(ISSCC 2021、2021年2月にオンライン開催)において、全体で195件の採択論文のうち合計15件をSamsungが占めた(論文の第1著者で判断。以下同)。目を見張るのは数の多さだけではない。様々な分野で論文が採択されたことだ。DRAMやNANDフラッシュメモリーはもちろんのこと、初の3nm SRAM、5nm AV1ビデオデコーダー、5G FR1対応RF IC、イメージセンサー、ニューラル・ネットワーク・プロセッサー、A-D変換器、LDO電源など、デジタルとアナログの両方で高い技術力を示す。この研究開発の裾野の広さを見る限り、今後も半導体分野での同社の躍進は止まりそうもない。

 ISSCCは他の国際学会に比べて、企業の発表が多いことが特徴である。Samsungに続き米Intel(インテル)は10件が採択された。20世紀には先端DRAMの発表で他国を寄せ付けなかった日本企業は最近のISSCCで影が薄くなっているが、ISSCC 2021ではソニーセミコンダクタソリューションズが踏ん張った。得意のイメージセンサー/測距センサーで4件の論文が採択された。うち1件は、ISSCC 2021で投稿論文数が急増し激戦区だった機械学習分野での採択であり、一矢を報いた格好になった。同分野で採択されたのは、CNN(Convolutional Neural Network)プロセッサー統合型イメージセンサーの論文である。

機械学習で投稿数急増

 ISSCC 2021の概要や見どころを、ISSCC ITPC Far East Regional Subcommitteeが国内報道機関向けにオンラインで説明した。全体の概要は、ISSCC 2021 Program Chairを務める東京大学の池田 誠氏が紹介した。例えば、ISSCC 2021のテーマは「Integrated Intelligence is the Future of Systems」(邦訳:知能集積こそが次世代のシステム)であり、半導体の世界がAIやシステムに向かうことを象徴しているとする。約3000人の参加を見込むが、オンライン開催のため移動(出張)の必要がなくなり、「ひょっとしたら1万人を超えるという期待もある」(同氏)とのことだった。

学会のテーマは「Integrated Intelligence is the Future of Systems」(邦訳:知能集積こそが次世代のシステム)
学会のテーマは「Integrated Intelligence is the Future of Systems」(邦訳:知能集積こそが次世代のシステム)
(出典:ISSCC 2021 東京記者会見)
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 池田氏はISSCC 2021全体で注目すべき技術トレンドも紹介した。最初に挙げたのは、機械学習関連技術の盛り上がりだ。ISSCCは12のサブコミッティーがそれぞれ技術分野をカバーして運営されているが、ISSCC 2021では機械学習サブコミッティーへの投稿が大幅に増えた。数が増えただけでなく、地域も広がった。前回は大半がアジアからの投稿だったが、今回は米州からの採択論文が増えたほか、19年0件だった欧州からの採択論文があった。

機械学習などに注目すべき技術トレンド
機械学習などに注目すべき技術トレンド
(出典:ISSCC 2021 東京記者会見)
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 ISSCC 2021の会期は21年2月13~22日で、米国西海岸時間の午前7時~9時20分に行われる。日本時間では深夜になるが、複数のトラックが並列実施されている例年のリアル開催と異なり、「その気になれば、すべての講演を聴講できる」(池田氏)。多くの講演は事前にビデオをオンデマンドで視聴可能である。その後、上述した時間にQ&Aをオンラインで実施するというスタイルで進められる。基調講演は4件。台湾TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Co., Ltd.)、米Xilinx(ザイリンクス)、米MIT(Massachusetts Institute of Technology)、ベルギーHarvest Imaging(ハーベストイメージング)CEO兼オランダDelft University of Technology(デルフト工科大学)の講師が基調講演に登壇する。前回好評だった企業の講師を招へいする「Invited Industry Track」は今回も行われる。今回は米Analog Devices(アナログ・デバイセズ)、米Texas Instruments(テキサス・インスツルメンツ)、独Infineon Technologies(インフィニオン・テクノロジー)、米Microsoft(マイクロソフト)、米NVIDIA(エヌビディア)、中国Baidu(百度)の6社から講師が登壇する。

ほとんどの講演が事前に視聴できるオンデマンドビデオ配信とリアルタイムQ&Aで進められる
ほとんどの講演が事前に視聴できるオンデマンドビデオ配信とリアルタイムQ&Aで進められる
(出典:ISSCC 2021 東京記者会見)
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4氏が基調講演を行う
4氏が基調講演を行う
(出典:ISSCC 2021 東京記者会見)
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合わせて6社の講師を招へいするIndustry Track
合わせて6社の講師を招へいするIndustry Track
(出典:ISSCC 2021 東京記者会見)
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 池田氏に続いて説明に当たったのは、ISSCC 2021 Far East Secretaryを務める、キオクシアの出口淳氏である。同氏は投稿論文数や採択論文数の地域別の推移などを紹介した。ISSCC 2021の採択論文数は195である(上述のInvited Industry Trackの6件は含まれない)。2件以上の発表を行う企業は10社、研究機関は1つ、大学は30校である(第1著者でカウント、以下同)。後述するように、様々な分野で発表して、最も目立つ企業はSamsungである。2件以上発表する日本の機関は2つ。4件発表するソニーセミコンダクタソリューションズと、2件発表する東京工業大学である。

企業ではSamsungの発表が多い
企業ではSamsungの発表が多い
図中でFEはFar East、NAはNorth America、EUはEuropeの略。(出典:ISSCC 2021 東京記者会見)
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日本の発表ではソニーセミコンダクタソリューションズが多い
日本の発表ではソニーセミコンダクタソリューションズが多い
濃い青色のマスで白抜きの文字はサブコミッティーの略号である。ANAはアナログ、RFはRF、WLSは無線通信、IMMDはイメージャー/MEMS/医療/ディスプレー、DASはデジタルアーキテクチャー、MEMはメモリー、MLは機械学習。(出典:ISSCC 2021 東京記者会見)
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